秋元さくら
塩のふり方
〈正しくふれば味にも健康にも良い〉
私が料理を始めたきっかけのひとつとして、シェフが格好良く「塩」をふる姿を見て憧れ、私もそうなりたいと思ったことがあります。
素材に対して均等に粉をかけるように「塩」をふることで、使う「塩」の量が圧倒的に減りますし、どこを食べても同じ塩加減という意味では、「塩」の振り方というのは料理をしていく上で非常に重要になります。
黒い紙の上で「塩」を均等にふれるように練習しました。
1回で出来るようにはなりませんので、皆様もイメージしながら「塩」をふるとよろしいと思います。
日本は湿度が高いので「塩」も湿気を吸ってベタついてきます。
私の店『モルソー』では「焼き塩」と云いまして、比較的サラサラの「塩」を使っていますが、それでも湿度の高い夏場などでは指に貼り付いてしまいます。
夏場にベタつきましたら、フライパンで炒って余計な水分を飛ばしてお使いになるのもお薦めします。
均等に塩打ちをする
「塩」をふる時は、食材に対して50cmくらい高いところからふるようにしています。
こうすると食材の範囲よりも広い範囲に「塩」が飛び散り広がりますが、食材に付く塩は適量になりますので飛び散るのを惜しまずに高い場所からふってください。
近いところから「塩」をふりますと、ふわっと広範囲に振ることが難しくなります。
3本の指もしくは4本の指で、たっぷり「塩」をつまんで、手に触れていない中心にある「塩」を、手首のスナップを使ってふわっとふりかけるようにすると、全体に広がります。
必要な分量だけつまんでふりますと部分的に集中してしまいます。
「塩」を均等にふることによって、使う量も減って減塩効果が高くなり健康にも良くなります。
胡椒は肉などの表面積に対してふりますが、「塩」は厚さに対してふりますので、厚い肉にはしっかり目に「塩」をします。
秋元さくら
青野菜のゆで方
〈大切なのは、お湯の量と塩加減〉
青野菜のゆで方をご紹介します。
春には豆類のお野菜がたくさん出てきます。
「いんげん」「モロッコいんげん」「そら豆」「グリンピース」「スナップエンドウ」などです。
それに加えまして、一年中スーパーに並ぶ「ブロッコリー」「オクラ」などの青野菜をおいしくゆで上げると、サラダにしていただいても美味しいですし、シチューや煮込み料理に彩りを添えて入れるにしても美味しくいただけますので、そのゆで方をご紹介します。
青野菜を茹でる上で一番大切なポイントは、青野菜を入れても温度が下がらないくらいのたっぷりのお湯でゆでることです。
常に沸騰した状態で鍋の中が保てるくらいの湯量でゆでるようにします。
またパスタをゆでる場合は、1%の塩分量でゆでると云われますが、青野菜の場合はそれよりも濃い濃度の1.4%の塩分量でゆでます。
目安としましては2リットルのお湯に対して28g(1.4%)の塩を入れます。
少し多いと感じるかもしれませんが、この塩分濃度でより美味しく召し上がっていただけるようになりますし、食感が残る良い歯触りのゆで加減となります。
浸透圧の関係で、塩分の薄いお湯でゆでると、どうしても歯ごたえのない野菜になってしまいます。
しっかりと緑の色を鮮やかにしたいので、冷やすのは氷水に冷やす方法をご提案します。
そして、この氷水にも1.4%の分量の塩を必ず入れます。
ゆでるお湯と氷水の塩分濃度を同じにすることで、美味しい塩分を持ち食感の残った青野菜となります。
青野菜をゆでる
しっかりと沸騰した鍋の湯に1.4%の分量の「塩」を入れて、青野菜を入れますが、お湯の温度が下がるような分量は入れないようにします。
今回は、「ブロッコリー」ひと株を一口大に切ったもの、「スナップエンドウ」「インゲン」各40gをゆでます。
青野菜を一度に全部入れると、お湯の温度が下がってゆで時間長くなって、青野菜がやわらかくなってしまいますので、まずは「ブロッコリー」だけを入れます。
沸騰したお湯に「ブロッコリー」を入れ30秒ほど、少し硬めにゆでて氷水に入れます。
お湯に「ブロッコリー」を入れてから、お湯が再びボコボコとなりましたら大体30秒です。
このあと余熱で火が入りますので、ガリッとした歯触りのあるゆで上がりとなります。
さらに「スナップエンドウ」と「インゲン」を入れ、やはり30秒経ちましたら氷水に入れます。
日本の「インゲン」は香りも良く美味しいので、パリパリとした食感を残してゆでるのが一番美味しいと思います。
「そら豆」をゆでる場合は、厚い皮の部分に少し切り込みを入れて、正確に40秒ゆでるようにします。
氷水に長くつけすぎると、水分を吸って水っぽくなりますので、熱が下がりました取り出して余分な水分を取り除きます。
大体2日から3日保存が可能ですので、サラダに入れたり、煮物の彩りに添えたり、お味噌汁に入れていただいたりと、いろいろ使っていただければと思います。
高橋雄二郎
盛り付け方と器の選び方
〈食べる人に思いを伝える〉
もちろん、盛り付け方や器の選び方というものは、人それぞれ自由だと思います。
私の場合、自分の癖のようなものがあります。
それは食べる人に対するメッセージのようなものを盛り付けに込めるということです。
こういう風に召し上がってほしいという思いを込めて盛り付けることが多いので、盛り付けには大体において意味があります。
例えば、個人的に菓子専門店の菓子の作り方が好きです。
菓子は、スポンジなどの下地の生地があり、硬めのムース、普通のムースというように層になっていて、上からフォークを刺して下まで一緒に食べてもらうことを計算されて作られています。
一緒に食べて美味しいという料理が好きですので、料理を皿に散らして綺麗に盛るのも良いのですが、お客様がそれぞれ別に食べてしまう可能性がありますので、できれば一緒に食べていただけるような盛り付けを心がけています。
私の店『ル・スプートニク』の代表的な料理として、フォワグラのソテーとビーツのチュリル※をバラに見立てた1品がありますが、もともとこちらの料理は、フォワグラとビーツを一緒に召し上がっていただくように、ミルフィール上に重ねていたのですが、どうしてもフォワグラとビーツのチュイルが重なる部分で、せっかくカリカリに焼いたビーツのチュイルが、湿度で萎えてしまっていました。
※チュイル tuile_薄い瓦形の焼き菓子。生地を焼いて柔らかいうちに樋型に入れU字形にして乾燥させる。
試行錯誤の結果、重ねるよりはフォワグラにビーツのチュイルを挿してみようということから、ビーツの赤を活かしてバラのように盛り付けたら喜ばれるのではないかということで、現在の盛り付けが生まれました。
実際の盛り付けは、皿にフォワグラのテリーヌを置いて、バラの香りを移したゼリー状のシートを被せて、そこに、ビーツのチュイルをバラの形に挿していきます。
この料理は『ル・スプートニク』の代表的な1品としてご提供しています。
フォワグラのテリーヌが溶けやすいので、ビーツのチュイルも直前に焼いて盛り付けてご提供しています。
こうやって食べてもらいたいという意図が、私のメッセージとして伝えるような盛り付けをしています。
器の選び方
私の器の選び方ですが、調理していて常に思うのは料理に何かしら付加価値をつけたいということです。
料理それぞれにはコンセプトがあります。
日本料理の要素のある料理ですと和の質感を感じる器などを選び、野菜の緑が多いようですと色が映えるように白の皿を選ぶなどします。
また、アスパラをシンプルにクラシックな方法で調理した場合などは、重量感のあるフランス料理らしいお皿を使うこともあります。
また、枝豆のチュロスなどで、自然な枝豆の形などを活かしたいときなどは溶岩石に盛り付けたりもします。
基本的に自由なんですが、料理のコンセプトによって料理の雰囲気を作るように器やお皿を選んでいます。
器を選ぶポイントはお客様に喜んでいただくということです。
ご家庭でも、ご家族にお料理を作る際は、お皿選びから心を込めると料理もより楽しくなると思います。
音羽創
白身魚の火入れについて
〈白身魚は皮付きで焼くのが基本〉
ご家庭で、鯖やサンマ以外に白身の魚を焼くという機会は少ないと思いますが、スーパーなどでは「真鯛」などの白身のお魚が売られていますので、ぜひチャレンジしたいただきたいです。
火を入れるポイントとしましては、皮付きのまま焼くことです。
それはなぜかと云いますと、皮の下にゼラチン質や脂身がありますので非常に旨味が詰まっていること。
それから、白身の淡白なお魚を焼くに当たって、皮がガードとなって、ゆっくり間接的に火が通ることで身がパサつきにくくなります。
以上のことから、白身魚を焼く時には皮付きのまま火を入れることをお薦めします。
白身魚を焼く
「白身魚」の身側と皮面の両面に軽く「塩」を振ります。
「塩」を振りましたら、香ばしく焼き色をつけるため皮面だけに「小麦粉/強力粉」をまぶします。
焼く前の準備でのポイントとして、「魚」は焼く30分程度前に冷蔵庫から出して、常温に近い状態から焼き始めてください。
「魚」が冷たすぎると、皮面は焼けているが身には火が入りにくいという状態になってしまいます。
フライパンに油を注ぎ、「白身魚」の皮面を下にして入れ、強火から中火の火加減で焼き始めます。
火を入れて魚が反ることがありますので、その場合は手で押さえるようにすると、むらなく綺麗な焼き色がつきます。
反らないようでしたら、そのままゆっくり焼きます。
あまり魚の身が厚いと技術を要しますので、適度な厚さの魚を選んでいただければ、簡単にしっとり美味しい焼き色をつけて焼き上げることができます。
火加減のポイントは煙が上がらないように火加減を調整することです。
煙が上がっていない状態では中火をキープしてください。
魚のまわりが少しずつ白くなってきますので、皮面から7割から8割火が入りまで、そのままゆっくり焼きます。
火が入り落ち着いてきましたら、ごく弱火にしてさらにじっくり火を入れます。
焼き具合が心配な場合は、ヘラなどを使って皮面が焦げていないか確認してください。
焦らずゆっくりと火を入れて、正味5分から6分ほどかけてじっくり焼きますと、非常に良い状態で「魚」が焼きあがります。
「魚」に8割方火が入りましたら、火を止めて「魚」を引っくり返し30秒から40秒ほど身面を焼きます。
30秒ほど経ちましたら、「魚」をフライパンから網などに取り出し1分から2分ほど休ませて、余熱で火を通します。
この間に、他の作業をして「魚」が冷めないうちに食卓に運び、温かい状態で召し上がっていただきます。