包丁の選びかた扱いかたについて/ジョン・キョンファ先生
プロの包丁
私は食いしん坊で料理家になったのですが、かれこれ45年目になります。
20代から40代後半までは調理士の専門学校でプロ向けの授業をやっていました。
その頃、韓国料理では「牛刀」「筋引き包丁」「骨スキ包丁」「出刃包丁」と、このような包丁を主に使っていました。
包丁で骨付きのカルビをバラしたり、牛タンの皮を剥いたりと色々な調理をしました。
学校で教えながらも店の厨房にも入っていましたので、その頃は包丁を研ぐだけでも大変でしたが、色々な包丁を使うだけの様々な調理がありました。
私の料理家人生の後半は、料理教室や講習会を通して、ごく一般の主婦の方々に手軽に作れる韓国料理をお伝えするというのが主流になりました。
本を出版したりテレビに出たりということもありますけれども、目の前のお客様に自分のやり方を見せながら、本当にお料理というのは楽しいよ、切るということは楽しいよと伝えるのが喜びのひとつです。
色々な料理の授業を経て、例えば日本料理を作るときは「柳刃包丁」や「和包丁」を使ったり、中国料理を教えるときは「中華包丁」を使ったりしていました。
でもプロ向けの包丁というのは、本当に使いこなせないと意味がないんですね。
どんなに立派な包丁でも、ちゃんと丁寧に手入れをしてあげないと使い物にならないんです。
家庭の包丁
45年で行き着いたのが、現在使っているいわゆる「文化包丁」とも「三徳包丁」とも呼ばれています1本です。
お教室でもデモンストレーションでも、この包丁1本でほとんどのお料理を作っています。
もちろん固いものを切るときには「出刃包丁」を使いますし、「骨スキ包丁」や「筋引き包丁」をたまには使うこともありますが、ほとんどの調理はこの包丁です。
長く使っていますので柄が褪せてしまったりしていますが、自分の使いやすい砥石で包丁を研いで、清潔に綺麗に保つことで使いやすいものになっています。
何十本も包丁は持っておりますが、この包丁が一番使いやすいものになっています。
プロはまな板が大きく包丁も長いものを使い、切る材料もまた大きなものですが、ご家庭では包丁だけ大きくても使い勝手が悪く、手入れも大変になります。
包丁を研ぐ
料理は不思議なもので切れない包丁で料理しますと辛く、美味しくはできませんのでイライラしてしまいます。
例えば野菜の千切りをたくさん使う料理などでは、愛情をかけた切れる包丁で切ると本当に上手に切れてストレスがなくなり、切っているだけで心が浄化されるようなそんな気分になってお料理がもっと楽しくなります。
時代に逆行しているのかもしれませんが、私は未だに「包丁研ぎクラス」を催して、手軽に包丁を研いで綺麗な切れる包丁で料理をしましょうと皆さんにお伝えしています。
「包丁研ぎクラス」にみえた方の中に、〈先生!毎朝食べる納豆が劇的に美味しくなりました〉と報告していただいた方がいらっしゃいます。
彼女は、包丁を研いで包丁が切れるようになったら、納豆に入れる薬味のネギをすごく良く切ることができるようになり、このネギのみじん切りが美味しく、その結果納豆が劇的に美味しくなった、と仰って喜ばれていました。
こんな時「包丁研ぎ」をお伝えて良かったなと心から思います。
今の時代は、キッチンバサミで材料を切ったり、スライサーや電動の色々な道具がありますが、私はやはり包丁が料理の一番の基本だと思っております。
ジョン・キョンファ先生のレシピは「こちら」をご参考ください。