薬食い
苦いは、美味い
なぜ〈合わせ薬味〉を作るかと申しますと、日本には古来より「薬品」と「栄養食」の境がありません。
日本人は、常に食事を「薬」として摂ってきた民族なんです。 日本には〈薬食い〉という文化があります。
複数の素材を合せまして「万能薬味」として作っておけば、〈冷奴〉〈鰹のタタキ〉〈お蕎麦〉などにあい、また「薬」とともに食事を摂れますので、日本の食文化にかなうものとなります。
もう一つ、これらは全部「苦味」ですが、この「苦味」が「旨み」に変わります。
例えば七味というのがあります。これも七つの薬味で「薬」でもありますが、美味しくてはダメなんです。
薬味が美味しくて「素材が不味く」ならずに、素材を活かすための「苦味」を利用することが日本の味の一つの「コツ」になります。
薬味
健康への近道
〈分葱(わけぎ)〉〈生姜〉〈大葉(青じそ)〉〈茗荷〉〈貝割れ大根〉_五つの野菜を使った「合わせ薬味」を作ります。
この五つの薬味は、どちらかというと夏野菜ですが、今では〈茗荷(みょうが)〉〈大葉〉〈生姜〉などは一年中スーパーでも売っています。
秋でしたら〈菊〉、春でしたら〈木の芽〉を入れたり季節によって作り分けたりしたら、よろしいかと思います。
ですから冬の鍋の薬味にお使いになったり、温かい「うどん」や「そば」の上に乗せたりしますと料理がうまくいきます。
この〈合せ薬味〉を冷蔵庫に常に保管しておくと、五日間ぐらい日持ちしますので、毎日食べていたくことが健康への近道かと思います。
※薬味には香りのみならず、消化を助ける、食欲増進、血行促進などの働きがあります。いろいろな料理に使え、五日ほど保存が可能ですので、作り置きしておくととても便利です。
調理
それぞれに、それぞれの
まず〈分葱〉からですが、無ければ〈青葱〉〈白葱〉でも結構ですから小口に刻んでください。
この時、切れる包丁ですと葱が潰れず濁った味になりません。
包丁もただ切れれば良いというものではありません。これを水に落とします。
〈大葉〉は茎を切り落とさないで、丸めて刻みますと最後まで刻みやすくなります。
最後に残った芯だけを捨てれば良いわけです。
〈茗荷〉は縦半分に切ってから小口に切ります。
この時も完全に切ってしまうとバラバラになってしまいますから、先っぽを少し残しながら刻むとうまく同じ形に切ることができます。
〈生姜〉の皮を厚く剥いてしまうと非常にロスが出てしまいます。
〈生姜〉はアルミホイルで擦ると簡単・綺麗に皮を剥くことができます。
〈生姜〉は粗みじん切りにします。これも端を少し残して薄切りにします。方向を変えて包丁を入れます。玉ねぎのみじん切りの要領です。
役割
調理には必ず理由がある
意外と厄介なのが〈貝割れ大根〉の種です。
いまは水耕栽培のスポンジがついたまま売られていますので、このスポンジがついたまま逆さにして水に入れ洗いますと種が簡単に取れます。
先にスポンジ部分をカットしてしまうと種が中に入って取れにくくなります。
〈貝割れ大根〉は2.5センチくらいの長さに切って他の薬味と一緒の水に入れます。
2.5センチに切った貝割れ大根には、ある役割があります。それは、この2.5センチの長さが他の薬味を絡めて「まとめ役」になるんです。
そして水の中の5種類の薬味を混ぜ合わせます。水の中に入れるのは野菜のアクを出して取るためです。
あまり長く水に浸けると旨みの効用がなくなりますので、素早く水洗いして取り出します。「夏にぴったりの万能薬味」の出来上がりです。
野﨑料理長の〈合せ薬味〉で、より旨みが引き出されたお献立です。
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〈くずし奴〉〈鰹のタタキ〉〈トマト素麺〉〈牛肉の冷しゃぶ〉