「分とく山」
野﨑洋光
フライパンで作る〈鰹のたたき〉
たっぷりの合わせ薬味と一緒に
口伝
皮目の旨みをいただく、魚のサラダ
この頃はスーパーでも鮮度の良い〈鰹(かつお)〉を売っています。
その見分け方としては、血合いの部分が黒ずんでいない、赤みを帯びているものを買うと良いでしょう。
また脂がのっていますと皮目に沿って色が変わっています。
皮目に沿って色の変わった部分の旨みを頂くためにタタキにするんです。
皮を取ってしまうと旨みが半減しますので、鰹を皮ごと食べようということで今回の調理になるのです。
もともと、タタキという調理をすることになったのは〝鰹を生で食べてはいけない〟という土佐藩の御触れがあったためです。
それを庶民が表面を焼いて「これは生ではない」として食べたということが由来となっています。
どちらにせよ、焼くことで生臭さが取れて旨みが増して美味しくなりますから、楽しんでください。
あとは薬味と一緒に食べるというのが日本の文化ですから〈合せ薬味〉と一緒に食べるということが健康への秘密です。
〈鰹に火を入れる〉まずフライパンに入る大きさに切ります。
切り身の皮の部分だけに塩をしてください。
塩気が旨みの基になりますので、少し多めでも構いません。
鰹を焼いていきますが、テフロン加工(フッ素樹脂加工)のフライパンでしたら油を敷かないで焼けます。
フライパンは冷たいうちから鰹を入れて焼いていきます。
皮の方だけ焼いて、身の方にあまり火を入れなくても十分美味しくなります。
串を刺して火にかざす焼き方でも良いのですが、フライパンでも十分に焼けます。
皮は平らに焼く
フライパンが冷たいところから入れるのがどうして良いかというと、熱いところに入れるとどうしても皮が踊ります。
冷たいうちだと平らに火を入れることができて、鰹に火が平均して入ります。
またここでは、皮を焼いて食べられるように焼いているだけですから、身にしっかり火を入れる必要はありません。
皮目に色が入り、皮の表面がパリッと焼ければ大丈夫です。あとは、フライパンの中で〝転がす〟くらいに回せば出来上がりです。
焼いてすぐ氷水につけたりしていますが、それは間違いです。
それはなぜかというと、氷水につけてしまうと旨みが抜けてしまうからです。
これは料理屋が準備をしておくためであって、家庭ではそれ以上の美味しさが作れます。
家庭の美味しさというのは、風合いが一番身近な距離で食べられることにあります。
〝焼きたて〟を切っていきます。
最初は包丁を途中まで入れて、次で最後まで切ります。
こうやって鰹は1本切り込みを入れて厚めに切り分けます。
切り込みは、厚い身に味が染み込み易くなるようにするためです。
〈鰹のタタキ〉は、薄く切ると食感が損なわれてあまり美味しくありません。
河豚などは身がしまっているから薄く切りますが、鰹は身が柔らかいので厚めに切ります。
全て切り分けたら、切り身を並べて酢をまぶします。
こうして酢を表面に馴染ませておくと、ポン酢がより馴染みやすくなります。
ひと手間かけて準備をする
次に器に〈盛り付け〉ます。ここに〈合せ薬味〉をたっぷりと乗せ、「もみじおろし(大根おろしに一味唐辛子を混ぜたもの)」を乗せます。
※苦味が苦手なお子さんには、バターでミディアムレア状のステーキにしても良いでしょう。
この上に「ポン酢」をかけます。
〈鰹のたたき〉とは魚のサラダですね。
柑橘系のポン酢で食べることによって楽しい食事となります。
※「ポン酢」の作り方_〈醤油 大さじ4/酢(煮切ったもの)大さじ3/オレンジの搾り汁 大さじ2/ごま油大さじ1〉を混ぜるだけ
材料〈2〜3人前〉
材料 | 鰹(皮つき) 1サク(約300g)/合わせ薬味 適量/酢 大さじ1/2 |
〈A〉材料 | オレンジの絞り汁 大さじ2/醤油 大さじ4/酢(煮切ったもの) 大さじ3/ごま油 大さじ1 |
〈B〉材料 | 大根おろし 1/2カップ/一味唐辛子 小さじ1/2 |
作り方
① 鰹は長さを半分に切り、ペーパーフキンで押さえて表面の水気を拭き、皮目だけに塩をする。
② テフロン加工のフライパン(油はひかなくてよい)に、②の鰹の皮目を下にして入れ、火をつける。
皮目がパリッとするまで焼き、転がして身の面もさっと焼く。
③ 鰹が熱いうちに、真ん中に切り目を1本入れながら食べやすい大きさに切る。(切り込みを入れることにより、食べ応えが出て、タレも絡みやすくなる。)
④ ⑤の鰹に酢をまんべんなく振りかけ、指で軽くたたいて酢を馴染ませる。
⑤ Aを合わせて簡単ポン酢を作る。
⑥ Bの大根おろしは、汁気を軽く切り、一味唐辛子を混ぜる。
⑦ 鰹を器に盛り、合わせ薬味、⑥の大根おろしを乗せ⑤の簡単ポン酢をかけ完成。
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