この「数の子」「黒豆」「田作り」の祝い肴3種は、正式なお屠蘇のいただき方〈式三献/しきさんこん〉とも密接な関係があります。
「お屠蘇」を飲んで元日に1年間の邪気を払うという風習は、古く中国から伝わり平安時代から現在まで続いているものですが、その飲み方として〈式三献〉の作法が守られてきました。
今日の屠蘇セットに大中小の盃が盃台に用意されているのがその名残りです。
お屠蘇を〈式三献〉でいただく際の作法は次のようなものです。(時代や地域によって多少異なります)
家族が揃い長幼の順で座ったら、まず最年長者が小の盃で屠蘇を飲み、盃を盃台に戻して次の者に回します。
次の者も同じようにして屠蘇を飲んだら、その次の者に回します。
こうして小の盃が一巡しましたら、全員が「数の子」を箸に挟んで〈一献〉と云って食べます。
中の盃は、最年長者ではなく2番目の年長者から飲み始めて、小の盃同様の作法で回し飲みして一巡したら、今度は「黒豆」を箸で挟んで全員で〈二献〉と云い食べます。
さらに大の盃は、3番目の年長者から飲み始めて、中・小の盃同様の手順で回し飲みして一巡したら、「田作り」を箸で挟んで〈三献〉と云って食べ、ここで「おめでとうございます」と祝って、おせち料理に手をつけて酒宴が始まります。
このように「数の子」「黒豆」「田作り」の祝い肴3種は、おせち料理の中でも古くから重要なものなのです。
この「祝い肴3種」の江戸本来の作り方を、神楽坂の鍋料理の名店「山さき」山﨑美香料理長に教わります。
祝い肴
式三献と祝い肴

数の子
二親(にしん)の子沢山
子孫繁栄を願った祝い肴、数の子。
甘い味のおせちが多いなかでメリハリをつけるため、しょうゆをきかせてキリっと仕上げました。
お酒にもよく合う一品です。
日本料理「山さき」
山﨑美香 料理長「江戸のおせち料理 数の子」
しょうゆをキリッときかせた、お酒がすすむ味▲画像をクリックすると料理塾のレシピへ移動いたします
黒豆
まめに働く
黒豆の味をいかすため、調味料にはしょうゆや塩を使わず、
シンプルに砂糖だけで仕上げるのが“山さき流”。ぜひ上質な黒豆を使って。
日本料理「山さき」
山﨑美香 料理長「江戸のおせち料理 黒豆」
ふっくらつやよく煮た黒豆は、老若男女に好まれる一品▲画像をクリックすると料理塾のレシピへ移動いたします
田作り
ごまめは田を作る
片口いわしの幼魚を干した田作り(ごまめ)は、田んぼのこやしに使われた五穀豊穣を願う縁起ものです。
しょうゆは控えめにして、いわしの味が引き立つように仕上げます。
日本料理「山さき」
山﨑美香 料理長「江戸のおせち料理 田作り」
ポキッと折れるまで炒りつけて、香ばしく仕上げるのがポイント▲画像をクリックすると料理塾のレシピへ移動いたします