「麻布長江香福筵」
田村亮介
まろやかな酸味がジューシーな豚肉のうま味を引き立てる
口伝
黒酢酢豚
黒酢を使った酢豚をご紹介します。
秋の味覚の「サツマイモ」と「レンコン」の根菜類を使って、秋らしい酢豚をご紹介いたします。
黒酢の酢豚は中国でも上海などの地方料理として一般的です。
中国では野菜と豚肉を一緒に炒めて酢豚を作らず、お肉だけで作るのが一般的です。
日本の場合は四季折々の食材がありますので、今回は根菜類と一緒に仕上げていきたいと思います。
材料の調理
「サツマイモ」は皮付きのまま2cm幅の輪切りにします。
皮付きのまま炒めた方が色合いも美しくなります。
「レンコン」は皮をむいて「サツマイモ」と同じくらいの大きさになるように切ります。
材料を同じ大きさに切ることによって、火の入り方も均一となります。
「酢豚」の「豚肉」は「肩ロース」を用意するか、少し贅沢に「ヒレ肉」がよろしいかと思います。
「もも肉」でもよろしいのですが、適度に脂身と赤身を兼ね備えた「肩ロース」がお薦めです。
「肩ロース」は筋と油が混じっていますので、まず包丁で筋目をしっかりと切りますと、加熱したときに歯切れの良い肉となります。
脂身にもしっかりと包丁の目を入れます。
中華料理店では「油通し」と云って大量の油の中に入れて火を通しますが、それはご家庭では難しいと思います。
そこで今回は、ぎりぎりの油の量で加熱をする調理方法をご紹介します。
「豚肩ロース」を厚く乱切りにせず、なるべく薄く広く切るようにします。
切り方としては、「削ぎ切り」と云いますか「斜めに削ぐように」一口大に切り分けます。
豚肉に下味をつける
「塩・胡椒」を振り下味をつけます。
酢豚は「酢」と「砂糖」の甘酢で、深くしっかりとした味、フルボディな味をつけますので、下味もしっかりとつけます。
魚などの下味よりも、もう一段階しっかりと下味をつける感覚です。
こうすることによって、甘酢の強い味と合わさっても、お肉の味がフワッと活きてきます
下味をつけた「豚肩ロース」に「溶き卵」を少しずつ加えて、お肉がバラバラにならないように、力を入れず優しく混ぜ合わせてください。
お肉の表面全体に卵が行き渡れば、「片栗粉」をしっかりとまぶし、全体をまとめます。
この段階では、卵とお肉と片栗粉がまだまだバラバラですので、このまま加熱すると肉同士がくっ付きます。
ある程度全体がまとまったところで、お肉一つ一つにボウルなどに取った片栗粉にまぶし形を作ります。
根菜類を茹でる
沸騰したお湯に「塩」を加えてから、まず火が通りにくい「レンコン」を入れます。
「レンコン」を茹でて3分間経ったら「サツマイモ」を入れ更に3分間茹でます。
全体を通して6分間くらい茹でる感覚です。
茹でている湯が沸騰してきましたら、中火にしてコトコトと茹でます。
豚肉に火を通す
「豚肉」が半分くらい浸かるくらいの量の油(フライパンに1から2cm)で揚げます。
油の温度は中火で150から160度くらいの温度で、肉を入れた瞬間周りに泡がジュワッと軽く出てくらいの温度で揚げていきます。
お肉を入れると油の温度は一気に下がりますので、火を強めて油の温度を上げます。
卵と片栗粉の「衣」が付いていますので、固まるまで、そのまま触らないで置いておきます。
ここで触ってしまいますと、衣が剥がれやすくなります。
油の中に入っているお肉の下半分の衣が固まってきたところで裏返し、同じように中火で反対側に火を入れます。
お肉を薄く広く切っているために、お肉に火が入りやすくなっています。
両面の衣が固まりましたら、一旦油から取り出して少し休ませながら、1分間くらい余熱で火を入れます。
1分間経ったら中火をキープしておいた油に再び入れて、もう一度片面づつ揚げながら火を入れます。
油に入れたときに大きな気泡と音がしますが、これはまだお肉に水分が残っていることを示しています。
お肉の水分が抜けて火が入ってくると気泡と音が小さくなってきます。
お肉を揚げる時には、この気泡と音に気を配りながら調理します。
大体片面30秒くらいで裏返します。この状態でお肉には7割程度火が入ります。
再び油から取り出して30秒ほど休ませながら余熱で火を入れます。
最後に強火(約180度)で一気にカリッと揚げます。
強火で衣の油が飛ぶと音が小さくなってきますので、それが仕上がりの合図となります。
ソースを作る
「水・三温糖・米酢・黒酢・たまり醤油・濃口醤油・水溶き片栗粉」を鍋に入れてから火をつけます。
「黒酢」100%ですと強すぎるので「米酢」と同量半々で使います。
黒く仕上げるために「たまり醤油」は色出しで使っています。
水溶き片栗粉を入れてから火をつけますが、この時しっかりかき混ぜておきますと、ダマになり難くい綺麗な「とろみ」をつけることができます。
ソースが沸騰して「とろみ」がつきましたらお肉を入れて、全体的にソースと絡めれば、お肉の方は完成です。
盛り付け
茹で上がった根菜類「サツマイモ」「レンコン」を皿に盛り付けます。
根菜の盛り付けは、綺麗に揃えるのではなく、色合いをちりばめて、ランダムな形や色々な向きで飾りました。
真ん中にお肉を盛りソースをかけます。
まろやかな酸味がホクホクの根菜類とジューシーな豚肉を引き立てる「黒酢酢豚」の出来上がりです。
材料〈2人前〉
材料 |
豚肩ロース 200g/塩・こしょう 少々/溶き卵 少々/片栗粉 適量/サラダ油 適量/れんこん 1/2節/さつまいも 小1本 |
〈黒酢ソース〉材料 |
水 150ml/三温糖 大さじ4/米酢 大さじ2/黒酢 大さじ2/しょうゆ 大さじ1/2/たまりしょうゆ 大さじ1/2/水溶き片栗粉 大さじ2 |
作り方
① さつまいもは皮付きのまま2cm幅の輪切りにする。れんこんも同じ大きさに切る。
② 豚肩ロースは筋、脂にしっかりと包丁目を入れ、一口大のそぎ切りにする。塩、こしょうで下味をつけ、溶き卵をまぶし、片栗粉を全体にしっかりとまぶす。
③ 鍋で湯を沸かし、塩少々(分量外)加えれんこんをゆでる。5分ほど経ったら、さつまいもを加え更に2~3分ゆでる。火が通ったら取り出す。
④ フライパンにサラダ油を1~2cmくらいの高さまで入れる。②の豚肉を中火で両面揚げ焼きする。両面の衣が固まってきたら一度取り出し、1分ほど休ませる。再び豚肉を入れ、中火で両面揚げ焼きする。火が7割ほど入れば取り出す。
⑤ 油の温度を上げ、④を強火で揚げ焼きする。
⑥ フライパンに<黒酢ソース>の材料を入れ、よく混ぜながら強火で沸騰させる。
⑦ ソースが沸騰したら、豚肉を入れ絡める。器に盛り、周りに根菜を盛る。
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