「山さき」
山﨑美香
江戸の伝統を美味しく楽しむ秘訣は「鍋奉行」!
口伝
ねぎま鍋
「ねぎま鍋」を作ります。
この料理は〝マグロの大トロ〟の部分を〝ねぎ〟と煮て食べるお料理ですが、冬には東京近郊でも深谷の白ねぎなど、美味しいおネギの旬となりますので、たくさあん召し上がっていただければと思います。
お鍋の御汁を作りますが、マグロを煮ますのでお酒をたっぷり入れたものにします。
「ねぎま鍋」は、江戸時代からのお料理で、マグロの脂がたっぷりのった部分の大トロは、むかしは保存がきかず、すぐ傷む部位でしたので捨てられていたのを、庶民の人たちがお醤油とネギと一緒に煮て食べていたのが「ねぎま鍋」の始まりです。
当時の人は「ねぎま鍋」が今日のようなご馳走になるとは、思いもしていなかったと思います。
今では大トロはご馳走ですので、たっぷりのお野菜を用意して召し上がっていただきたいと思います。
御汁を作る
「出し汁」は、マグロからたくさん良いダシが出ますので、さほど気を使って良い出し汁を作らなくても大丈夫です。
普段お使いのダシで結構です。
お酒をたくさん使いますので、いったん沸かしてから御汁をはるようにします。「出し汁」に「酒」「塩」、たっぷりの「醤油」を入れます。
具材の処理
腹側の筋のたくさん入った「大トロ」の柵を切り分けます。
「大トロ」は、たっぷりと脂がのっていますので、よく煮ても硬くなるということはありませんから、よく火を入れます。
脂を含んでいるので、ふわっとして美味しく煮えます。
逆に、よく煮えていない方が、生臭さが出てしまいますのでしっかり煮てください。
「ねぎま鍋」は、「マグロ」にたっぷり脂が入っていないと、煮た時に硬くなってしまいますので、少し贅沢ですが「大トロ」をお求めいただければと思います。
お鍋に入れる野菜は、一口大(2cmから3cm)に切った「長ねぎ」、軸を切った先の部分の「クレソン」と同様の「せり」、乾燥を水で戻した「わかめ」を用意します。
「クレソン」と「せり」は同じくらいの長さに、「わかめ」は5cmくらいの長さに切ります。
鍋を煮る
お鍋を美味しくつるコツは、食べる1回分の分量の具材だけをお鍋に入れて煮てから取り分けて、お鍋が空になってから次の具材を入れて、また煮るというように、その都度、お鍋を空にすることがポイントです。
いつまでもお鍋の御汁が綺麗で、煮たものが鍋の中に残らず、煮え時の一番美味しいものを何度も召し上がることができます。
「マグロ」を鍋に入れるタイミングは、必ず御汁が沸いてから入れることです。御汁が沸いていないと「マグロ」の肉汁が御汁の方に出てしまってアクが出ます。
鍋の御汁が沸きましたら「マグロ(大トロ)」「ねぎ」を入れます。「マグロ」にいい具合に火が入りますと浮いてきますので、それまで待ちます。
鍋料理は、御汁の中に具材の旨みを全部出して、それを味わうことが一番の楽しみですので、できる限り御汁を綺麗に保つことが必要だと思います。
「マグロ」が鍋中で踊るようになり、浮いてきて火が入りましたら、お野菜を入れます。
お野菜も色々混ぜて入れるのもよろしいと思いますが、私は、まず飽きないように、そして、お野菜の味が良くわかるように、一回に入れるお野菜の種類を1種類にして食べるのが良いのではないかと思っています。
色々混ぜて食べるという醍醐味もあるとは思いますが、「ねぎま鍋」の場合は、「マグロ」と「ねぎ」に加えるお野菜を少しずつ替えて、楽しんでいただければと思います。
お野菜はそんなに煮込まなくても大丈夫です。
素材の旨味をたっぷり活かし、野菜がたくさん召しあがれる〈ねぎま鍋〉できました。
〆のご飯
「ねぎま鍋」の綺麗な御汁は雑炊にせず、白いご飯にかけて「汁かけご飯」で、雑炊とは違った味わいをぜひお試しください。
「白飯」に「御汁」をたっぷりとかけて、最後に薬味の「粗挽きコショウ」をかけて、いただきます。
材料〈2人前〉
材料 |
大トロ(2cm厚さ) 8切れ/長ねぎ 2本/クレソン 2束/わかめ 適量/せり 1束/粗挽き黒こしょう 適量/ごはん 適量 |
〈A〉 |
だし汁 4カップ/酒 80ml/しょうゆ 50ml/塩 小さじ1 |
作り方
【下準備】
・長ねぎを3cm長に切る
・クレソン、せりをざく切りにする
・わかめを水で戻して5cmのざく切りにする
① 鍋に<A>を入れ沸かす。
② ①に大トロと長ねぎを食べる分だけ入れる。大トロが浮いてきたら器に盛る。お好みで粗挽き黒こしょうをふる。
③ ①に野菜を1種類ずつ入れ、火が通ったら器に盛る。
④ しめのごはんをつくる。器に盛ったごはんに鍋の残り汁をかけ、粗挽き黒こしょうをふる。
◆具材を食べる分だけ入れるのは、汁が濁らないようにするためと、具材の煮過ぎを防ぐため。
◆大トロはしっかり、火を通さないと生臭いのでしっかり火を通す。
◆大トロは脂があるので、火を通しても身が固くなりにくい
料理塾