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フランス料理 古賀純二 料理の時候 夏の料理 新着レシピ

トマトのファルシ

「シェ・ イノ」
古賀純二

トマトの酸味と甘味、貝の旨味が一体となった目でも楽しめる一品

口伝

トマトのファルシ

トマトの中に詰め物(ファルシFarci)をした料理を作ります。
今回はトマトの中につぶ貝を詰めてフライにします。
もともと「シェ・イノ」ではエスカルゴを詰めて作っています。
トマトの酸味と甘味、貝の旨味が一緒になった料理です。

つぶ貝の調理

鍋の沸騰した湯に「塩」ぬめりとりの「酢」、殻から出した「つぶ貝」を入れて下ゆでします。
「つぶ貝」の表面にさっと火を通すくらいで取り出します。
「つぶ貝」の固い部分(貝ふた)を外し、真ん中から切って内側の内臓を取り除きます。
「つぶ貝」によっては唾液腺と呼ばれる部分に毒を持つものがあるので、必ず内臓は取り除きます。
つぶ貝の毒_生命の危険はないが熱が出たり吐き気を催すことがある。


フライパンに「オリーブオイル」と、みじん切りにした「エシャロット」を入れて火加減を弱火の若干強めで「シャロット」の甘味と香ばしさを出します。
「エシャロット」の良い香りが出てきたら「にんにく」を加えて炒めます。
少し色づいたところで、軽く「塩」をしてから、「ペルノ」「ブランデー」を加えてアルコールを飛ばします。
「ペルノ」も「ブランデー」もアルコール度数が高いので、すぐ炎が出ますから炎が出たらいったん火を消します。
ペルノPERNOD _アニシードをはじめ15種類のハーブから作られる。19世紀のパリで芸術家達に愛されたリキュール。
アルコールが飛びましたら、「ブイヨン・ド・レギューム」を加えます。
料理で出た「人参、玉ねぎ、ポワロー、パセリなど」の野菜くずを水で煮出した出汁。調理で出た野菜の残りクズを使うことで野菜を無駄にしない出汁。ブイヨン・ド・レギュームの作り方はこちらを参考にしてください。
三等分に切り分けた「つぶ貝」を入れて軽く煮込みます。


この時点で既に美味しい料理になっていますが、これをさらにトマトに詰めます。

エスカルゴバターを作る

エスカルゴバター beurre pour ascargots_もともとエスカルゴのオーブン焼きに使われたことからこの名称となる。


フードプロセッサーに、水洗いして軸を除いた「パセリ」を入れ20秒回します。
さらに「アーモンドプードル almond powder 」「エシャロット」「にんにく」「塩」「胡椒」を入れていったんざっくり混ぜてから、常温に戻して柔らかくした「無塩バター」を分量の半分入れて撹拌し、残りは後から少しずつ加えます。
途中フードプロセッサーの周りについているものを落として、さらに撹拌させて滑らかにし上げます。
ラップを引いてその上に「エスカルゴバター」をおき、回しながら円筒状にします。


この状態のまま冷凍庫で保存し、その都度使う分をスライスします。
「エスカルゴバター」は、肉の上に置いてオーブンで焼いたり、パンにつけても美味しいので色々な料理に試してみてください。

トマトに詰める

「トマト」をヘタをつけたまま湯むきにして皮を取ります。
我々が〝パリジャン〟と呼ぶ野菜のくり抜き器で「トマト」の底に穴を開けて、内側の中身をドンドンくり抜きます。
しっかりした「トマト」でしたらギリギリまで中身をくり抜いても形が崩れませんが、熟れた柔らかい「トマト」ですと皮が破れることがありますので注意してください。


くり抜いた中身は後ほどソースとして使います。
「トマト」に「エスカルゴバター」と煮込んだ「つぶ貝」をギュウギュウに隙間なく詰めます。
最後に「エスカルゴバター」で蓋をするようにします。

揚げる

詰め物をした「トマト」の表面に軽く「塩」をして、「細かくしたパン粉※」をまぶします。
※フードプロセッサーで撹拌してから裏ごししたもの。
この「パン粉」をまぶすことで「トマト」に「ベニェ生地」がつきやすくします。
「卵黄・コーンスターチ・薄力粉・ビール」を混ぜて「ベニェ生地」を作り、「トマト」の7分目まで「ベニェ生地」を付けます。
ベニェbeignet_卵を加えた衣をつけて揚げるフリッターや、生地を揚げて膨らませたもの。16世紀に伝わって日本食として定着した「天ぷら」もこのベニェの一種
160度から170度の油に「トマト」のヘタを持ちながら入れて、底の部分から表面に軽く火を入れるように揚げます。


最初からポトンと入れてしまうと「トマト」の底が鍋底にくっついてしまいます。
「ベニェ生地」の衣が固まったら静かに下ろします。
中の詰め物ファルシには火が入っていますので、約2分ほど「トマト」の表面をしっかり揚げます。
全体の衣が固まってトマトが膨らんできましたら揚げ上がりのサインですので取り出します。

盛り付け

「エスカルゴバター」を弱火でゆっくり煮溶かしたものを皿の真ん中に盛り、シャンピニオン(マッシュルーム)、エシャロットのみじん切りをバターでゆっくり炒めた「シャンピニオン・デュクセル」を「エスカルゴバター・ソース」の上に、さらにその上に揚げた「トマト」を乗せてから、周りに「エスカルゴバター・ソース」と、先ほどくり抜いたトマトの果肉を使って作った「トマトのクーリ」をひいて飾れば出来上がりです。
クーリcoulis_ミキサーにかけてピューレ状にして濾したもの

エスカルゴバターとつぶ貝をフルーツトマトに詰めてフライにした楽しい〈トマトのファルシ〉完成です。

  材料〈4個から5個分

 材料

フルーツトマト 4~5個

にんにく(すりおろし) 大さじ1と1/2/塩 適量/ブランデー 大さじ1/ブイヨン・ド・レギューム(野菜だし) 1/2カップ

〈A〉エスカルゴバター

パセリの葉 50g/アーモンドプードル 50g/エシャロット 小1かけ/にんにく 1かけ/塩 小さじ1/粗びき白こしょう 小さじ1/バター(無塩) 200g

つぶ貝(生のむき身) 6個/オリーブ油 適量

〈B〉ベニェ生地/衣

卵黄 1個分/コーンスターチ 70g/薄力粉 大さじ2/ビール 90ml/パン粉 適量/揚げ油 適量

 

作り方

【下準備】
・バターは室温に戻しておく。
・トマトはへたを残して湯むきする。
・エスカルゴバターに使うにんにくは芯を除いて、すりおろす。
・卵は溶きほぐし、パン粉はミキサーで粉砕し裏ごしする。

① エスカルゴバターを作る。フードプロセッサーに<A>のバター以外の材料を入れて粉砕する。バターを4~5回に分けて加え、全体が均一に混ざるまで撹拌する。ラップにのせロール状に包み冷凍庫に入れる。
② つぶ貝は洗って、塩と酢を各少々(分量外)入れた湯を沸騰させ、さっと下ゆでする。かたい部分(=貝ふた)を除き、縦に1本切れ目を入れ汚れ(=唾液腺。毒がある)をしごいて取り除き、3等分に切る。
③ フライパンにオリーブ油大さじ2を中火で熱し、エシャロットを炒める。香りがたってきたらにんにくを加えて、軽く塩をふる。にんにくが色づき始めたらペルノーとブランデーを加え、煮立たせてアルコールを飛ばす(炎が上がるので注意して)。
④ ブイヨン・ド・レギュームを加えて煮立ったら、②を加えて1分ほど煮込み、火を止める。
⑤ トマトに具を詰める。湯むきしたトマトの下部にくり抜き器で穴を1つ開け、その穴から皮がやぶれないようにトマトの中身を取り出す。穴に①をひとつまみと③を3~4かけ入れ、これを2~3回繰り返してぎっしり詰める。最後はエスカルゴバターで穴をふさぐ。
⑥ トマトソースを作る。小鍋にくり抜いたトマトの中身を入れて、どろっとするまで弱火で煮つめてから、裏ごしする。
⑦ トマトに衣をつけて揚げる。ボウルに<B>を入れて泡立て器で混ぜ合わせ、さらっとした衣を作る。⑤に軽く塩をふってパン粉を全体にまぶし、衣をトマトの高さ7分目まで浸してつける。160~170℃に熱した揚げ油で、パン粉がカリッとするまで2分ほど揚げる。
⑨ 器に煮溶かしたエスカルゴバター適量を敷き、あればチャンピニョン・デュクセル(※1)適量を重ね、⑦をのせて盛りつける。まわりに煮溶かしたエスカルゴバターと⑥を添える。

※1._みじん切りにしたマッシュルームとエシャロットをバターでじっくり炒め、うまみを凝縮させたもの。

きのこのデュクセルとは、みじん切りにしたマッシュルームとエシャロットをバターでじっくり炒め、うまみを凝縮させたもの。
つぶ貝は生の歯ごたえを残すために火を入れすぎないこと。
揚げ油の量は、トマトに油をかけながら揚げるので、鍋の深さ5cmほどでよい。
トマトを揚げるとき、最初の5秒はヘタを持ってトマトの半分だけを揚げ油につけてから、手を離して油に入れるときれいに仕上がる。油が熱いので注意すること。
残ったエスカルゴバターは使う分だけカットして、肉や野菜、パンにのせて焼くとおいしい。

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