「シェ・ イノ」
古賀純二
野菜と魚介のうま味が体にしみわたるスープ仕立て
口伝
ホタテのナージュ
ナージュというのはフランス語で〈泳ぐ〉という意味があります。スープ仕立ての料理になります。
※ナージュ nage_甲殻類、貝、魚を茹でるためのクール・ブイヨン
「ブイヨン・ド・レギューム※」「フュメ・ド・ポワソン※」「貝の出汁」を使って作ります。
※ブイヨン・ド・レギューム_野菜のブイヨン、〈脂肪のないブイヨン〉とも呼ばれる。ポロネギ、ニンジン、蕪、セロリ、パセリのアクを抜きながら40分煮て、野菜を押さずに濾す。トマトを加えることもある。
※フュメ・ド・ポワソン_魚のフォン(fond/ソースや煮込みの煮汁のもととなる液体)をフュメ(fumet)と呼び、玉ねぎやパセリの茎、シャンピニオンなどのクズ野菜と白身魚(舌平目やタラなど)の骨を煮て作る。魚のアラを白ワインと水で煮る。
野菜のブイヨンを作る
「ニンジン」の皮を剥いてブイヨンに入れます。
ニンジンの皮やネギの青い部分など、調理の中で出る普段捨ててしまうクズ野菜を煮てブイヨン・ド・レギュームを作ります。
ご家庭でテリーヌや、飾り切りなどした野菜の切れっ端など、クズの野菜が出てくると思いますが、そういうものをブイヨンにして常にストックしておくと非常に便利です。
コンソメのもとにしたり、ソースの甘味出しにしたりと重宝しますので、ご家庭で出たクズ野菜は捨てずにブイヨンにすると、いろいろな使い方ができてよろしいでしょう。
スープを作る
「ニンジン」「プティ・オニオン(小タマネギ)」「セロリ」「マッシュルーム」を切り分けます。ニンジンは型を使って花の飾り切りにします。
鍋に「ノイリー・プラット※/無ければ白ワイン」を入れてアルコールを飛ばしたら、「ブイヨン・ド・レギューム」を加えてから「ニンジン」「プティ・オニオン」「セロリ」「マッシュルーム」を入れてさっと火を通します。
※ノイリー・プラット_フランスのドライ・ベルモット(白ワインにニガヨモギなどの香草、スパイスを加えたフレーバードワイン)
さらに「フュメ・ド・ポワソン」「貝(ハマグリ)の出汁」を味を見て調整しながら加えます。
本日は「ホタテ」を使いますので「貝の出汁」を入れてバランスを整えましたが、無くても構いません。
極端な話「ブイヨン・ド・レギューム」があれば「フュメ・ド・ポワソン」も無くても構いません。
「ブイヨン・ド・レギューム」は野菜が無駄になりませんし、濾した後の野菜をミキサーでペーストにして、カレーのソースやシチューに入れたりして、さらに使うことができますので、どんどんチャレンジしてみてください。
コク出しのために「バター」を入れます。
一旦火を止めて、ここに「ホタテ」を入れて半ナマの状態まで火を入れて器に取り出します。
「ホタテ」を取り出したら、カットした「フルーツトマト」を鍋に入れて温め、スープを器のホタテにかけます。
「セルフィーユ」を上に乗せれば完成です。
「ホタテ」のかわりに「牡蠣」で作られても美味しいでしょう。
もう、どうやっても美味しいですね、これは!〈ホタテのナージュ〉です。
材料〈2人前〉
材料 |
帆立 6個/小玉ねぎ 1個/セロリ 1/2本/にんじん 1/4本/フルーツトマト 1/2個/マッシュルーム 1個/フュメ・ド・ポワソン(※1) 100cc/ブイヨン・ド・レギューム(※2) 200cc/貝(はまぐり)の出し汁 30cc/バター 30g |
ノイリー(※3) 適量/セルフィーユ 2~3枚(飾り) |
※1フュメ・ド・ポワソン、(fumet de poisson) 魚の出し汁
※2ブイヨン・ド・レギューム、(boullion de legume) 野菜の出し汁
※3ノイリーはメーカー名でドライベルモットという酒。フランス料理では主にこれを煮詰めたソースにクリームを加えて、魚のソースなどに用いられる。
作り方
① にんじんの皮を剥く。にんじんは4cm程の輪切りにし、花形で抜き、2~3mmにスライス。
② セロリは軽くすじを取り、繊維に逆らうように3mm程スライス。小玉ねぎは4mm程にスライス。マシュルームも3mm程にスライスする。
③ ノイリー(適量)を火にかけアルコールをとばす。
④ ③にブイヨン・ド・レギュームを入れスライスした野菜を入れ強火で煮立てる。
⑤ ④にフュメ・ド・ポワソン、はまぐりの出し汁を加え2/3量になるまで煮詰める。沸騰したら弱火にし、バターを加える。
⑥ 一度火を止め、帆立を加え、軽く火を通す。
⑦ 煮立ったら火を止めお皿に盛りつける。この時少し残す。
⑧ ⑥の鍋に角切りにしたトマトを加え少し火を通し、先程の皿に盛りつけ、セルフィーユを飾り完成。
◆普段捨ててしまう野菜の切れ端や皮などを煮出してストックしておくと、うま味出汁として様々な料理に活用できる。
◆ホタテの食感を残すため、仕上げにさっと火を入れる程度にする。
◆仕上げにバターを少し加えるとコク深い味わいになる。
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