シェフの一皿がご家庭でも。華やかな一品です
口伝
イサキのポアレ バイエルディとバジルソース
和食の焼き魚だけではなくて洋風のポアレという調理法で〝魚料理〟を楽しんでいただきたいので本日の料理をご紹介します。
私としては、皮目がパリッとして付け合わせの上に魚が乗っている魚料理が〝洋風のポアレ〟で、大根おろしとお醤油が添えられるのが和食の〝焼き魚〟というイメージがあります。
本日は付け合わせもご紹介いたしますので、ぜひ洋風の魚料理をご家庭でお試しください。
バイエルディを作る
南フランスを代表する「ズッキーニ」は今日本でも一年中スーパーなどで手に入ると思いますので、これを使います。
まず「黄色と緑のズッキーニ」を4mmから5mmの幅にカットします。
「トマト」は横にスライスするように「ズッキーニ」と同じ幅にカットします。
「ナス」は、水分が多い野菜ですので、焼き上がりの大きさを他の野菜と揃えるには少し大きめの幅でカットします。
野菜にはしっかりと焼き色がついていると、美味しそうに見えますのでフライパンから湯気が上がるくらいしっかりと熱しておきます。
フライパンがしっかりと温まりましたら、「ズッキーニ」「ナス」を並べ、「塩」「胡椒」をします。また、お好みで「ドライ・ハーブ(エルブ・ド・フランス)」やオレガノ、バジル、ローズマリーなどの「生のハーブ」を入れます。
「ナス」は油を吸いますので少し多めの油でしっかり焼きます。
焼き色と焦げの違いは非常に微妙なのです。
野菜は糖分が多いので焼きますとその糖分が変色して焼き色がつきますが、焼きすぎるとこれが焦げになります。
「トマト」を入れ「塩」を振って焼きます。
両面に焼き色がついたものからバットなどに取り出します。
全ての野菜に焼き色がつき取り出しましたら、10cm角にカットしたクッキングペーパーの上に、野菜を円を描くように並べて置きます。
バイエルディを作る
イタリアの「ジェノベーゼ・ソース」にはたっぷりのパルメザンチーズをたっぷり入れますが、チーズを入れますと保存性が悪くなり、時間が経つと酸味が出てきたりしますので、料理によって必要な場合にはチーズを入れるなどして使い分けています。
ミキサーに「バジル」を入れて攪拌しますが、香りが良くてフレッシュな「バジル」をミキサーの刃でガリガリ傷つけてしまいますと、エグミを出したくありませんので最初に「オリーブオイル」を多めに入れるようにします。
ミキサーは「バジル」を少しずつ刻むようにしてまわし、「にんにく」のみじん切り、ローストした「松の実」を入れ、ミキサーの中をかき混ぜながら「オリーブオイル」を加えながら少しずつペースト状にします。
水やブイヨンなどの水分を加えるとペースト状になりやすいのですが、保存性が
悪くなります。
「バジル」の素材感が残っているくらいの方が、フレッシュな香りなどの旨みを楽しむことができます。
「バジル・ペースト」は真空瓶に入れれば2週間から3週間、真空袋に入れて冷凍すれば一ヶ月は保存することができます。
「バジル・ペースト」に「塩」を加えて味を調整すれば「バジルソース」の出来上がりです。
バイエルディを作る
三枚におろした「イサキ」を半分にカットして、焼いた時の〝縮み〟と〝反り返り〟を防ぐために皮目に切り込みを入れます。
「イサキ」の身の方にだけ「塩」をふります。
冷たい状態のフライパンに「オリーブオイル/サラダ油」をひいて、「イサキ」を置いてから強火にして温めます。
「イサキ」の身が反ってきましたら、フライ返しなどで上から押しつけて皮目をしっかり焼き付けます。
身の反り返りがなくなり、皮目が焼き固まりましたら弱火にして、身の部分が白っぽくなるまでじっくり焼き付けます。
フライパンの空いている部分に、先ほど用意した「バイエルディ」を乗せたクッキングペーパーごと置き火を加熱します。
「イサキ」は皮目が焦げないようにじっくり火を入れます、この時に強火にしてしまいますと身に火が入る前に皮目が焦げ付いてしまいます。
「イサキ」の身がうっすらとピンク色になって8割方火が入りましたら、再度強火にして皮目をカリッと焼き上げます。
火を止め「イサキ」を裏返して、余熱で全体に火を入れます。
魚のポアレは〝最初に強火、次に弱火にして、再び強火にしてから火を止める〟と覚えてください。
バイエルディを作る
さらに「バジルソース」を引き、温めた「バイエルディ」をクッキングペーパーから取り出して盛り、その上に「イサキのポアレ」を乗せます。
最後にお好みで、サニーレタスやグリーンカールなど、キャベツのみじん切りでも構いませんので添えてください。本日は「セルバチコ」という少し苦味の強いルッコラを添えてみました。
パリパリの皮目が美味しい〈イサキのポアレ バイエルディとバジルソース〉完成です。
材料〈2人前〉
材料 |
イサキ 1尾/オリーブ油 少々/塩 適宜 |
〈バイエルディ〉 |
ズッキーニ 1本/なす 1本/トマト 1個/エルブ・ド・プロヴァンス(※1) 少々/オリーブ油 少々/塩・コショウ 適宜 |
<バジルソース> |
バジル 30g/にんにく 小さじ1/松の実 15g/オリーブ油 100ml |
※1. 「プロヴァンスのハーブ」という意味のエルブ・ド・プロヴァンスは、タイム、セージ、フェンネル、ローリエ、ローズマリー、バジル、マジョラムなど、南仏プロヴァンス地方で採れるハーブを乾燥させてブレンドしたミックスハーブ。配合はメーカーなどによって微妙に異なるが、南仏産のハーブを使う点は共通。
作り方
① バイエルディ用のズッキーニ、ナス、トマトは5㎜の厚さに切る。フライパンにオリーブオイルをしき、強火で熱する。フライパンがしっかり温まったら野菜を入れて色づけるように焼く、塩・コショウをし、ドライハーブ(エルブ・ド・プロヴァンス)をふる。
② 10cm角にカットしたクッキングシートの上に1の野菜を、丸く(円形に)並べておく。
③ ミキサーに<A>を入れてバジルソースを作り、塩・コショウで味を調える。
④ フライパンにオリーブオイルをしき、身に塩をしたイサキを皮目を下にして焼き始める。フライパンの隙間に①をクッキングシートごと入れ、同時進行で加熱する。最初は強火、皮目が焼き固まったら火を弱め、身に8割ほど火が入ったら再度強火にしてカリッと焼き上げる。その後火を消してひっくり返し、身には予熱で火を入れる。
⑤ お皿に③のソースを流し、バイエルディーをしいてその上にイサキをのせ、サラダを添える。
・ナスはズッキーニより気持ち厚めに切る。ナスを焼く時は(水分が多いので)、多めの油で焼く。火を入れる時は、まずズッキーニとナスを先に入れて焼き、ひと呼吸置いてトマトも入れる。
・ナス、ズッキーニ、トマトは、彩りを考慮しつつ、端を重ねながら見栄えよく並べる。
・バジルソースを作る時、オリーブ油は最初から全部加えず、バジル、ニンニク、松の実を入れたところに少しずつ、様子を見ながら加えていく。混ぜすぎるとバジルの色がくすんだり、えぐみも出て来るので、最初はチョン、チョンと1~2秒ずつ回し、なめらかになってきたら十数秒程度連続で回す。多少粒が残っているぐらいの方が、フレッシュ感が楽しめる。
・油が熱くなってから魚を入れると身が縮んでしまうため、フライパンを火にかけたら(油が冷たいうちに)すぐ魚を入れ、じっくり火を通す。フライ返しなどでぎゅっと押しながら焼くと、反り返りをふせぎ、身がふっくら仕上がる。
◆バイエルディは、薄切りにしたズッキーニとトマト、茄子を重ね焼きにした南仏の野菜料理。今回は黄色のズッキーニを使ったが、緑ズッキーニでもよい。
◆ポワレは切り身にした魚や肉を、油をしいたフライパンで焼く調理法。
◆バジルソースは「ソース・ピストゥー」と呼ばれ、南仏ではレストランでも家庭でもよく使われる。あっさりと、バジル、ニンニク、オリーブオイルだけで作ってもいいが、松の実を加えるとコクと旨味が増す。パルメザンチーズをプラスしたものもポピュラー。パスタとも好相性。
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