「ル・スプートニク」
髙橋雄二郎
骨付きのラムをやわらかく均等に焼くコツは必見
口伝
ラムのスパイスロースト クスクス仕立て
ラムラック/子羊を今回は煮込まずにローストで仕上げます。
ラムをローストする
「ラムラック/子羊」の背肉部分の骨をまず出します。骨と肉の間に筋がありますので、筋をしっかりと切りますと、綺麗に骨が出てきます。
お腹の部分に近い部位を取り除いて(野菜と一緒に煮てスープを作りますのでカットしておいてください)、骨を出します。骨側の筋を逆さ包丁で外します。綺麗に骨が出ましたら。脂が出やすいように、脂面に切り込みを入れます。
「子羊肉」に「塩」「胡椒」「スパイス/クミン、アニス、シナモン、ペンネル、コリアンダー、ガラムマサラを混ぜたもの」を振ります。
「子羊肉」をタコ糸で格子状に縛り、フライパンで焼き色を付けますが、少量の「オリーブオイル」と「タイム」と「ローズマリー」を入れて強火で火を入れます。
焼き色がつきましたら、「タイム」「ローズマリー」を取り出し、余分な脂を捨てます。
「子羊肉」にオリーブオイルを回しかけして、「タイム」と「ローズマリー」をのせて、アルミホイルをかぶせてから、200度のオーブンに3分間入れて、取り出して5分間温かい場所で休ませるというのを10回ほど繰り返します。
10回ほど繰り返しましたら、繊維を断ち切るために火を入れます。
フライパンに「子羊肉」の脂面を下にして入れ、たっぷりの「オリーブオイル」を回しかけして、熱々の油を骨側にかけながら火を入れます。
最後に完全に火が入ったかどうかを確かめる際は、肉に鉄串を刺し入れたのを唇に当てて「熱い」と「ぬるい」の中間と感じたら、大体50度から60度ですので、それが合図です。
ソースを作る
ココット鍋に、皮ごと半切りにした「ニンニク」半株、「たまねぎ」「トマト」「人参」「ズッキーニ」「ナス」「パプリカ」を大きめの乱切りにして入れます。
普通の「塩」でも結構ですが、今回は「ゲランド※の粗挽き塩」をかけました。
※ゲランド_ブルターニュ地方ゲランドGuerandeで、ローマ人によって伝えられた塩田方式により作られた塩。塩田に最初に浮かぶものをフルール・ド・セルfleur de selと呼ぶ。
ここに「塩」「黒胡椒」「タイム」「ローズマリー」「生姜」、そして「スパイス類」を入れますが、「スパイス」で必ず入れていただきたいのが「コリアンダー」と「クミン」「ガラムマサラ」です。
「オリーブオイル」をまわしかけて、先ほど「子羊肉」がら切り取ってカットした、腹側の肉を炒めて火を入れたものを加えて、ココットに蓋をし1時間ほど煮込みます。
途中「ズッキーニ」「ナス」「人参」「パプリカ」に火が入ったところで取り出して、付け合わせとして使います。
取り出した野菜は、アルミホイルで蓋をして水分が逃げないようにします。
ココットの残りの野菜に白ワインを入れて、アルコールが飛びましたら、濾し器でしっかり濾します。
最後に味見をして「塩」で調整したら、ソースの完成です。
付け合わせとして、もうひとつ「小ジャガイモ」を使いますが、こちらはココットで他の野菜と一緒に煮てしまいますと、スープが濁りやすくなってしまいますので、「水」と「塩」で別に茹でます(ご家庭でしたら電子レンジで加熱しても結構です)。
クスクスを戻す
「クスクス」と同量の「湯」に「塩」「オリーブオイル」を入れて沸騰しましたら、ボウルの「クスクス」に加えます。
全体を混ぜてボウルにラップをして密閉してから、温かい場所においておくと10分ほどで戻ります。
仕上げ
「付け合わせ」を温めて「胡椒」を振ります。
「子羊肉」のタコ糸を外し、骨に沿って包丁を入れます。
肋骨と付け根の場所は、キッチンバサミでカットします。
肩に近く骨があった場所は「塩」が入りにくいので、「塩」を振ります。
戻した「クスクス」を皿に盛り、次に「野菜類」を盛って「子羊肉」を切り分けたものをおいて、再度肉の内側に「塩」を振ります。
もしソースポットがありましたら、「ローズマリー」や「タイム」を入れてから、その中に「ソース」を濾し入れてお出しするのも、演出効果が高いかと思います。
〈ラムのスパイスロースト クスクス仕立て〉野菜の甘味、旨味を凝縮したソースをたっぷりかけてお召し上がりください。
材料〈4人前〉
<ラムのスパイスロースト> |
/ラムラック(チョップ8本分・背骨あり)900g/塩 適量/粗挽き黒こしょう 適量/スパイス類(※1)各少々/EXVオリーブ油 適量/タイム(生)2枝/ローズマリー(生)2枝 |
〈ソース〉 |
にんにく(株ごと横2等分) 1/2株分/玉ねぎ(4つ割り)3.5~4個分/トマト(4つ割り)2個分/にんじん(大き目の乱切り)1本分/ズッキーニ(大き目の乱切り)1本分/なす(2㎝幅の輪切り) 2本分/黄パプリカ(大き目の乱切り) 1個分/新じゃがいも(小)4個/しょうが(薄切り)2枚/スパイス類(※2)各少々/タイム(生)2枝/ローズマリー(生)2枝/塩(ゲラントの粗塩など)2つまみ/EXVオリーブ油 大さじ2/白ワイン 大さじ2 |
〈クスクス〉 |
クスクス(※3) 100g/水 100g/塩 少々/EXVオリーブ油 大さじ1 |
※1. スパイスはアニスパウダー、シナモンパウダー、コリアンダーパウダー、クミンパウダーなど。ガラムマサラ小さじ1/2で代用可。
※2. スパイスはクミンパウダー、ガラムマサラ、ターメリックパウダー、ナツメグパウダー、コリアンダーパウダー、粗挽き黒こしょうなど。ガラムマサラ小さじ1/2で代用可。
※3.クスクスは世界最小と言われる小粒のパスタ。中近東やフランスでよく食される。
作り方
① ラムラックは余分な脂身や筋を取り除き、あばら骨を先端から4㎝ほど露出させ、脂身側全体に縦の切り目を細かく入れる。取り除いた脂身と筋は一口大に切って取っておく(野菜の煮込みに使用)。
② ①のラムラック全体に塩をしっかり振る。黒こしょう、スパイス類も振り、タコ糸で全体を格子状に縛る。
③ フライパンを強火で熱し、②の脂身側を下にして乗せ、オリーブ油大さじ1を入れる。ローズマリーとタイムを加え、脂身側に焼き色がついたら耐熱のバットに取り出す。
④ ③のフライパンに残った油を捨て、続けて①で取っておいた脂身と筋を炒め、全体に色が変わったら取り出す。
⑤ ③にオリーブ油適量を回しかけ、③のハーブを乗せ、2重にしたアルミ箔を被せる。200℃に予熱したオーブンに入れて3分加熱し、温かい場所で5分休ませる。これを計10回ほど行って、ラムラックに徐々に火を入れていく。
⑥ <野菜の煮込み>を作る。厚手の鍋に、新じゃがいもとワイン以外の材料と④を入れ、蓋をして弱火にかける。1時間ほど煮たところでスープと具に分けるため、別の鍋にパプリカ、ズッキーニ、なすを移し、アルミ箔をかけておく(具となる)。にんじんもやわらかくなったら移す。
⑦ 新じゃがいもは皮つきのまま水からゆでて、串がスッと通ったら取り出す。半分に切り、⑥のパプリカの入った鍋に加える。
⑧ <クスクス>を作る。ボールにクスクスを入れる。小鍋に分量の水を入れて火にかけ、沸騰したら塩、オリーブ油を入れ、クスクスに回しかける。すぐにラップをかけ、温かい場所で10分ほど蒸らす。
⑨ ⑥のトマトなどが入った鍋に白ワインを入れ、アルコール分が飛ぶまで沸かし、シノワ(またはザル)で濾す(スープとなる)。味をみて足りなければ塩(分量外)で調える。
⑩ <ラムのスパイスロースト>を仕上げる。フライパンをよく熱し、⑤のラムラックの脂身側を下にして乗せ、オリーブ油を多めに入れる。スプーンで骨ぎわにオリーブ油をかけながら加熱し、香ばしく色づいたらバットに取り出す。金串を中心に刺して下唇に当て、ほの温かくなっていれば焼き上がり(冷たければ再度フライパンで加熱)。
⑪ ⑥のパプリカなどの入った鍋を火にかけ、全体が温まったら塩、粗びき黒こしょう(各分量外)で味を調え、火を止める。
⑫ ラムラックのタコ糸を外し、背骨を切り離す。切った面に塩(あればフルールドセル)少々を振り、あばら骨に沿って4等分する。
⑬ 器にほぐした⑧のクスクスと⑪を各1/4量と、⑫のラム1切れを盛る。ラムの断面に塩(あればフルールドセル)を振り、オリーブ油適量をかける。残りも同様にする。
⑭ ティーポットなどにタイムとローズマリー各適量(分量外)を入れ、⑨を茶漉しで濾しながら注ぎ、⑬に添え、かけながらいただく。
◆ラムラックはフライパンで火の通りが悪い脂身側(骨側)のみ加熱し、オーブンでじっくりと低温調理することで均等に火を入れ、やわらかく仕上げる。
◆ラムラックは脂身側に切り目を入れることで脂が出やすくなる。また、タコ糸で縛ることで反りを防ぎ、大きさを均一にする。
◆作り方⑨で濾す際は、小さめのレードルなどを押し付けて、野菜のエキスをしっかり絞り出す。
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