「山さき」
山﨑美香
ポキッと折れるまで炒りつけて、香ばしく仕上げるのがポイント
口伝
江戸のおせち料理 田作り
※田作り/片口いわしの幼魚の煮干し(別名:ごまめ)およびそれを炒って飴をからめた料理
小さなイワシは、その昔は田んぼの肥やしになっていたので、田を作るで「田作り」、お正月に食べる料理〈祝い肴〉のひとつです。
田作りを炒る
鍋でもフライパンでも構いませんが、焦げやすいので弱火にします。
お鍋が熱くなってきたところに「田作り」を入れます。いっぺんに炒ろうとすると時間がかかりますので、ひと摑み程度、ちょうど鍋底に広がるくらいの量で何度かに分けて炒っていきます。
「田作り」に火が入りますと、腹わたの苦みなどがなくなり香ばしくなります。
しっかりと火が入るとより美味しくなりますので、時々手でかき混ぜながら気長に火を入れてください。
熱くなり、かき混ぜるのが手では無理になりましたら、箸で大きく広げながら左右に振って炒り付けます。
だんだん火が入りますと〝めざし〟などを焼くときと同じ香りがしてきますが、これが良い香りに変わってきましたら、ひとつ取り出してつまんでみて〝パキッ〟と折れるようになりましたら、炒り上がりです。
炒った「田作り」は、直接バットに置いてしまいますと、場合によっては汗をかいて水分が戻ってしまうことがありますので、必ず紙を一枚敷いた上に置くようにしてください。
炒り上がった「田作り」は、生のものと比べますと全体に黄色がかったものになります。
絡める飴を作る
鍋に「酒」「みりん」「砂糖」を入れ、中火から強火で火を点けます。このとき箸を入れないで、「砂糖」などは鍋をゆらして溶かすようにします。
沸いてきましたら色付けの「醤油」を入れ、「塩」を加えて味を締めます。「飴」を煮詰めていきますと、鍋の中の泡の状態が細かいものから、粘りが出て大きな泡に変わります。
泡全体が鍋の上の方に上がってきて、真ん中あたりから大きな泡が出てくるようになりましたら「飴」の完成の頃合いです。
火を止めてから、鍋を大きく揺すって出来上がりですが、出来上がりを確認する場合は、「飴」を少し箸に取ってみて離したり着けたりした時に粘りがあり、糸を引くような状態であれば大丈夫です。
飴と絡める
「飴」の入った鍋に「田作り」を入れますが、折れた尾やヒレなどのカスが入らないように、手で掴んで入れるようにしてください。
入れてから箸でザックリと混ぜ合わせて、全体に飴が絡めば出来上がりです。
「田作り」を盛り付けるときは、箸を水で濡らしてから盛り付けると、くっつかずに巧くいきます。
お醤油を少なめにして塩で味を締めた分素材の味を感じられます〈田作り〉の出来上がりです。
材料〈作りやすい分量〉
材料 |
田作り(※1)80g/酒 1/2カップ/みりん 大さじ2/砂糖 大さじ3/醤油 小さじ1/塩 ひとつまみ |
作り方
① 鍋かフライパンに田作りをひとつかみ入れ、弱火にかけてやさしくかき混ぜながら空炒りする。ほんのり色づいて魚の香りがたってきたら、1尾をとり出しポキッと折れるくらいになっていればよい。ペーパータオルを敷いたバットに広げて冷ます。残りも同様に空炒りする。
② 田作りがほんのり色づいて魚の香りが立ってきたら、1尾を取り出し折ってみる。ポキッと折れるくらいになっていたら、ペーパータオルを敷いたバットに広げて冷ます。残りも同様に空炒りする。
③ 鍋をきれいにし、酒、みりん、砂糖を入れて中火にかける。鍋を軽くゆすって砂糖を溶かし、煮立ったらしょうゆ、塩を加える。
④ そのまま煮詰め、細かい泡が次第に大きくなり、泡が勢いよく浮き上がってきたら火を止める。菜箸の先に少しつけてみて、軽く糸が引けばよい。
⑤ ②をクズ粉が入らないようにやさしく両手ですくい、熱い状態の④に加え、菜箸で混ぜてなじませる。オーブンシートを敷いたバットに広げて冷ます。器に盛りつけるときは、箸先を水でぬらすとくっつきにくい。
保存方法:冷暗所で2~3日保存可。
◆田作りは一度に全量を炒るより、小分けにしたほうが、早く効率よく炒ることができる。
◆田作りは最初は手でやさしく混ぜ(やけどに注意する)、熱くなってきたら菜箸で混ぜるとクズ粉が出にくい。
◆田作りはポキッと折れるくらい、しっかり炒ることで香ばしくなり、おいしく仕上がる
◆作り方③で田作りをあえる飴は、加熱直後はさらっとしていても、冷めると飴状に固まる。
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