「分とく山」
野﨑洋光
骨までやわらか、先人の知恵と旨味が凝縮
口伝
秋刀魚の有馬煮
「秋刀魚の有馬煮」を作りますが、「有馬」というのは山椒の名産地「有馬/兵庫県神戸市」から「山椒」の代名詞となっています。
近年、「秋刀魚」は刺身でも食べることができますし、本来は「塩焼き」が一番美味しいのですが、今回は「秋刀魚」を佃煮風に煮て「山椒」ピリッと効かせた伝統の料理をご紹介します。
食思が進む料理ですし、「秋刀魚」の内臓はミネラル分が豊富ですので、これを骨ごと体に摂り入れるという、昔からの日本の知恵をこの料理に学ぶことができます。
秋刀魚の処理
「秋刀魚」をお選びになるときは、ウロコがついてもの、目が赤くなく透き通っているもの、が鮮度の良い証拠です。
近年は物流が良くなっておりますので、冷凍物でも美味しくなっています。
「秋刀魚」は、3cm幅(頭と尾の部分は4.5cm幅)の筒切りにします。
切り分けたら、たっぷりのの「塩」を全体的にまぶして20分から30分置きます。
30分ほど起きましたら、内臓を入れたままで、湯通し〝霜降り〟をして、冷水に取ります。
霜降りは、表面のアクを取り生臭さを消して味を締めることができます。
冷水につけますのは、秋刀魚の皮が剥がれて、煮崩れてゼラチンが出しまうのを防ぐためです。
手で「秋刀魚」の表面のアクを取り除きながら、冷水から取り出し、水気を切ります。
秋刀魚を煮る
「秋刀魚」を煮る時には、鍋に焦げを防ぐためのキッチンペーパーを敷いて、セルクルあるいは缶詰の缶のようなものを真ん中に置いてください。
このセルクルの回りに、煮崩れを防ぐために「秋刀魚」を縦にして並べます。
ここに落し蓋をします。
落し蓋をしすることで、これもまた荷崩れを防ぎます。
落し蓋の上に水を入れた容器などを置いて、重石とします。
鍋中の「秋刀魚」が踊ってしまわないように、落し蓋と重石をします。
「秋刀魚」を、ピシッと動かないように押さえつけてからコトコト煮ます。
これが「魚」を骨が柔らかくなるまで長く煮る時の手法です。
「日本酒・水」を入れて沸騰させます。
普通の水だけですと煮るのに長い時間が必要となりますので、酒を多めに使います。
沸騰したらアクを取り、「砂糖」を加えます。
最初から「砂糖」を入れるとアクを取る時に、「砂糖」まで一緒に取ってしまうので、「砂糖」は必ずアク取りの後に入れるようにいてください.
2時間から2時間半ほどコトコト煮ますと、骨が柔らかくなっていますので、「醤油・みりん」を入れます。
全体に馴染むまで煮ますと、泡が大きくなってきますので、重石と落し蓋を取って「たまり醤油」を入れて煮汁を詰めていきます。
ここで最初に鍋の中央に置いたセルクルの出番です。鍋底のセルクルにある煮汁を、お玉などで全体に満遍なくかけます。
そこに、「有馬山椒」を加え、さらにセルクルの煮汁を満遍なくかけながら煮ます。
光沢のある黒く美しい煮汁になりましたら完成です。
このまま召し上がっても構いませんが、冷めると粘着が出て料理がより美しくなります。
「有馬山椒」を入れることによって旨味を凝縮した〈秋刀魚の有馬煮〉ができました。
材料〈2人前〉
材料 |
さんま 2尾 |
〈A〉 |
水 200ml/酒 800ml/砂糖 160g |
〈B〉 |
しょうゆ 大さじ2/みりん 大さじ2 |
|
たまり醤油 10ml/有馬山椒 大さじ1 |
作り方
① 秋刀魚は3cm幅(頭と尾の部分は4.5cm)に筒切りにして塩をして20~30分おいた後、霜降りして水にとる。
② 水気をとってから鍋に<A>の煮汁と共に入れ、落しぶたをしてコトコトと煮ていく。
③ 骨が、やわらかくなったら(約2時間~2時間半)<B>を入れてさらに煮て、煮汁が詰まってきたら、たまり醤油を入れて、仕上がる直前に有馬山椒を入れる。
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