「シェ・ イノ」
古賀純二
じっくりと低温で火入れした豚肉は、ジューシーな仕上がり
口伝
豚肉のロースト しいたけソース
シイタケの風味をつけた「豚肉のロースト」です。
噛んだ瞬間にシイタケの風味が効いて、肉だけでも美味しくいただけます。
お店ではほとんど豚肉は提供しないのですが、子牛やポルチーニを使った調理法を、本日は「豚ロース肉」と「しいたけ」に置き換えたものをご紹介します。
しいたけパウダーを作る
大振りの「しいたけ」の軸を取ったものを、オーブンで均等に火が通るように、できるだけ大きさを揃えて薄切りにします。
薄切りした「しいたけ」を、オーブンシートを敷いたプレートに並べます。
※「乾燥しいたけ」をお使いいただいても結構ですが、完全に水分が抜けているものでないとパウダー状になりませんので、しっかりと乾燥したものをお使いください。
これを80度のオーブンに2時間から3時間入れますが、1時間30分ほどで乾燥しているかどうか、手などで確認しながら時間を調整してください。
カラカラの状態に乾燥した「しいたけ」をオーブンから取り出して、ミキサーなどで粉砕してパウダーの出来上がりです。
豚肉をローストする
豚肉の脂面に格子に切り込みを入れます。
切り込みを入れることによって、フライパンで焼いた時に脂が出やすくなります。
この脂で豚肉自体に豚肉の香りを付けます。
フライパンで焼きますが、焼く直前に「塩」をします、「胡椒」は後にします「胡椒」を先にしますと、焦げて風味が飛んでしまうからです。
低温の状態のフライパンで脂面を下にして、常温の「豚ロース肉」を中火で焼きます。
じわじわと脂を出しますが、音がし始めたら弱火にして少しの「サラダ油」を入れます。
「豚ロース肉」の脂にはしっかりと香りがありますので、その香りを有効活用しながら焼き目を付けます。
焼き目がつきましたら、脂身を下にしてオーブンに入れます。
お店では、オーブンの温度を65度くらいの設定で肉の芯温を55度くらいに保つように1時間程火を通しますが、ご家庭ですと100度以下というのは難しいので、100度で30分ほど火を通します。
30分以上時間をかけると肉の表面が硬くなってしまいます。
「豚ロース肉」を30分オーブンに入れたものを10分ほど休ませます。
弱火のフライパンに「バター」「豚ロース肉」を入れ、「しいたけパウダー」を加えます。
「バター」を焦がさないように「豚ロース肉」を焼きます。
脂が体に良くないと云われますが、摂りすぎが良くないだけです。
「バター」に溶かした「しいたけパウダー」を「豚ロース肉」にかけながら焼きます。
火加減は常に弱火です。
ここで注意することは「バター」「しいたけパウダー」を焦がさないようにすることです。
全体にシイタケの香りがまとわりつくようにします。
お店ではサラマンダーという天火の機械で、表面にはつみつを塗ってキャラメル状にして出します。
「豚ロース肉」に香りが付いたらフライパンから取り出します。
ソースを作る
「豚ロース肉」を焼いたフライパンに「エシャロット」「塩」「ブランデー/ガスの場合は一旦火を止めてから入れる」「マデラ酒/甘みの強いお酒_甘目がお好きな方は増して調整」を入れて強火でアルコールを飛ばします。
普段ですとここで、ブイヨンやダシを加えますが、本日は豚の旨味が十分に出ていますので、このまま仕上げます。
アルコールが飛んで泡が大きくなりましたら「トマト」を入れ、味見をして「塩」で調整してください。
さらに好みですが「酢」を加えます。
「エシャロット」の代わりに、ケッパーやパセリを入れたり、「エシャロット」とニンニクを加えたりして、お好みのソースを試してみてください。
盛り付け
本日は、付け合わせに、今回はジャガイモと生ハムを交互にテリーヌ型に詰めたもの※、フルーツトマトを用意しました。
適当な大きさに切り分けた「豚ロース肉」を盛りソースをかけて、「ローズマリーの花」を散らします。
最後に、しいたけパウダーを全体に散らして〈豚肉のロースト しいたけソース〉の出来上がりです。
一般的に手に入る豚ロース肉を使い温度管理をすることで均等に火が入り、綺麗な色に仕上がる、鳥のもも肉なども同じ方法でしっとりと仕上げることができます。
材料〈4人前〉
材料 |
豚肩ロースかたまり肉 500g/しいたけ(大)2枚/トマト(皮をむいて5㎜角)1/2個分/エシャロット(みじん切り)大さじ2/塩 適量/バター(食塩不使用)100g/ブランデー 1/2カップ/マデラ酒 1/4カップ/白ワインビネガー 大さじ1/好みの付け合わせ(※1)適量 |
作り方
【下準備】
・豚肉は室温に戻しておく。
① しいたけは石突きを取り除き、約1㎜厚さの薄切りにする。オーブンシートを敷いた天板に重ならないよう並べ、80℃に予熱したオーブンで120分ほど加熱し乾燥させる。取り出してミルサー(またはすり鉢)でパウダー状にする。
② 豚肉は外側の脂身に5㎜間隔で斜め格子の切り目を入れ、全体に塩を強めに振る。
③ フライパンを弱火で熱し、豚肉の脂身を下にして入れる。火を少し強め、煙が立ってきたら再度弱火にし、脂の出が少なければサラダ油適量(分量外)を加えて脂身をカリッと焼く。残りの面も薄く焼き色がつくまで焼き、脂身を上にして、スプーンで上から油を2から3回ほどかける(アロゼ)。
④ ③の脂側を下にして耐熱のバットなどに取り出し、100℃に予熱したオーブンで30分ほど加熱する。脂身を下にして取り出し、アルミ箔で包んで10分ほどおく。
⑤ フライパンを弱火で熱してバターを溶かす。③の豚肉の脂身を下にして入れ、①を2~3つまみほど取り分けて残りを全て加える。時々フライパンを手前に傾けながら、スプーンでバターをすくって豚肉の上からかけ(アロゼ)、全体的に焼き色が濃くなったら取り出す。
⑥ ⑤にエシャロットと塩適量を加えて炒め、エシャロットがしんなりしたら、ブランデー、マデラ酒を注いで強火でアルコール分を飛ばす(火口がガスコンロの場合は火を止めてから行う)。
⑦ ⑥にトマトを加え、トマトに火が入ったら塩適量で味を調える。仕上げに白ワインビネガーを加え、一煮立したら火を止める。
⑧ ⑤の豚肉を2~3等分に切り分け、器に盛る。好みのつけ合わせを添え、⑦のソースをかける。ローズマリーを飾り、⑤で取り分けたしいたけのパウダーを適量振る。
※1.今回のつけ合わせは、塩、こしょう、ワインビネガー、オリーブ油でマリネをしたフルーツトマトにシブレットの小口切りを振ったもの。もう1つは、1㎝角のじゃがいもを炒め、生ハムと交互にテリーヌ型に詰め、オーブンで中まで火入れした後、薄く切って薄力粉をまぶしてソテーした「じゃがいものテリーヌ」。
◆作り方①で80℃のオーブン設定が出来ない場合は、ザルに広げて完全に乾燥するまで天日干しにする。
◆豚肉の脂身に切り目を入れるのは、脂を出やすくするため。深く入れる必要はない。
◆作り方⑤でアロゼする際は、バターを焦がさず、しいたけの香りを保つことが大事。
◆お店では通常、豚肉のオーブン加熱は65~68℃で1時間加熱している。
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