「分とく山」
野﨑洋光
素材の味を凝縮する調理法で
口伝
鯛のちり蒸し
「ちり蒸し」というのは、元々は今で云うポン酢の〝ちり酢〟をつけて食べるもので、魚を蒸すことによって身の柔らかい優しい味で食べるという料理になります。
ちり酢を作る
「醤油」「酢/煮切ってお使いください」「オレンジの搾り汁/みかんでも可」を用意して柑橘類を使ったポン酢を作ります。
ボウルに「醤油:酢:オレンジの搾り汁」を「3:2:1」の割合で入れて、コクを出すために「ごま油」を少量混ぜれば、みりんなどの調味料を入れなくてもポン酢「ちり酢」を簡単に作る事ができます。
具材の下処理
「鯛」の両面に塩をして20分から30分ほど置きます。
こうすることで「鯛」に下味をつけて〝味の道〟を作り味が入りやすくなります。
「しいたけ」の軸を取りますが硬い時は、軸の切り口に十字に包丁を入れますと食べやすくなります。
「長ねぎ」は4cmから5cmの長さに切り、側面に3箇所ほど包丁を入れますと火が通りやすくなり、食べる時に芯が飛び出すこともなく歯切れも良くなります。
「白菜」はざく切りにします。
蒸す時に器に「鯛」がくっつかないように「昆布」を用意します。
用意する「昆布」は出汁ガラで結構です。
「鯛」に塩をして3分経ちましたら、魚を湯に通して冷水で洗う〝霜降り〟をします。
この霜降りで魚を湯の風呂に入れてエグ味と雑味を取り除きます。
同様に「長ねぎ」と「しいたけ」も湯通しして同じく雑味を取り除きます。
湯を通して「しいたけ」などの旨みが逃げることはなくすっきりとした味になります。
蒸す
バットなどに「豆腐」、「昆布」を敷いて「鯛」をのせて「日本酒」をかけてから蒸し器の中に入れます。
中火で5分ほど蒸します。
5分経ちましたら、バッドに「長ねぎ」と「しいたけ」「白菜」を並べてさらに5分蒸して火を通します。
こうすることによって野菜に火が通り過ぎてまずきなることを防げます。
「鯛」「豆腐」と「野菜類」の蒸し始める出発点は別々ですが、仕上がる時間は同じになるように時間差をつけて加熱します。
料理は調理の順番を知ればより上手くできます。
蒸し器の下の部分では100度で湯が沸いていますが、その湯気が上の部分にあがってきたときは約80度から90度くらいまで温度が下がります。
この低温で加熱することによって「やさしい火を入れる」方法が日本古来からの調理方法です。
この料理の場合は、魚に味をつけるとか絡ませるということではありませんので、素材本来の持ち味を生かすものですから、魚の鮮度が良いことが大切となります。
現在西洋料理の業界で低温調理という調理方法が騒がれていますが、「茶碗蒸し」「おこわ」などを作る際に使われていますように低温調理という方法は、日本では平安時代頃からあった優しい調理の技法なのです。
蒸し上がりましたら器に持って「ちり酢」を別の器で添えます。
鯛・豆腐・白菜・長ねぎ・しいたけの素材の味が凝縮された旨味を味わってください〈鯛ちり蒸し〉出来ました。
材料〈2人前〉
材料 |
鯛(切り身) 2切れ(120g)/木綿豆腐 1/4丁/白菜 1枚/しいたけ 2個/長ねぎ 1/3本/出汁をとったあとの昆布 1枚 |
〈A〉 |
しょうゆ 大さじ3/酢(煮切る) 大さじ2/オレンジの絞り汁 大さじ1/ごま油 大さじ1/2 |
作り方
<下ごしらえ>
木綿豆腐: 4cm角に切る
白菜: ざく切り
しいたけ: 軸を取り裏に十字の切れ目をいれる
長ねぎ: 4~5cm長さに切り5mm幅に切れ目をいれる
① 鯛は両面に薄く塩(分量外)をまぶして30分おく。
② しいたけと長ねぎを霜降りして、同じお湯で①の鯛も霜降りをして冷水に取り、汚れやウロコを洗う。
③ お皿に昆布を敷き、鯛と豆腐を乗せ、酒(分量外・大さじ2程度)を上からふり、蒸し器で5分蒸す。5分経ったら白菜、しいたけ、長ねぎを加えさらに5分蒸す。
④ 器に彩りよく盛り付け、蒸し汁を入れる。
⑤ (a)を合わせたポン酢を添える。
◆鯛に塩をうすくつけることによって味の道をつくる(味が入ってきやすい)
◆蒸す前に酒をふることによって水っぽさを防ぐ
◆蒸すという調理法は低温調理になり、魚と野菜の素材の味を引き出し、やさしい柔らかい味になる
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