「トラットリア・ダ・ケンゾー」
西沢健三
煮込みソースとからませたコシと弾力のある極太パスタ
口伝
ピーチのスーゴフィント
ピーチpici はイタリア中央部トスカーナ地方シエナ地方特産の卵を使わないシンプルな手打ちパスタです。
今回はフードプロセッサーを使って簡単に時間短縮で作ります。
パスタ生地を作る
フードプロセッサーに「中力粉」と「水」を入れて、まとまるまで撹拌します。
撹拌している間にもグルテンが非常に出ますので練りやすくなります。
板に取り出して、体重をかけるようにして練ります。
トスカーナパンなどより水分が少ないので力が必要になります。
粉物はまとまることによって艶が出て来ます。
本日は「中力粉」を使っていますが「強力粉」でも「薄力粉」でも構いませんのでお好みでお使いください。
イタリアでは「中力粉」「薄力粉」「強力粉」という分け方はせずに粉の荒さでタイプが分かれていますが、基本的にはティーポゼロという粉を使います。
これが日本の中力粉にあたります。
生地がまとまってきましたら、店では真空パックにして空気を抜きより馴染ませてコシと艶を出します。
ご家庭ではラップに包んで冷蔵庫に2時間から3時間、もしくは半日寝かせていただければ理想的です。
麺を作る
半日寝かせた「生地」を打ち粉をして伸ばします。
パスタマシーンがなければ麺棒で伸ばしてください。
「生地」を折りたたんで何回も伸ばしているうちにグルテンとコシが出て来ます。
打ち粉は「生地」の固さに合わせて、柔らかい様ならたくさん、固い様でしたらしなくても構いません。
「生地」は5mmの厚さに伸ばします。
「生地」が伸びましたら打ち粉をして7から8mmの幅にカットします。
形は均等でなくても、より手作り感が出ますので不揃いで結構です。
カットした「生地」を手で回しながら細長く30cmくらいの長さに伸ばします。
そのままにしていますと麺同士がくっついてしまいますので、伸ばしたら打ち粉の中に入れます。
打ち粉に絡めたらザルなどで余分な粉を落とせば「ピーチ」の完成です。
和えて仕上げる
「ピーチ」麺を塩が1%の濃度で入った湯で10分ほど茹でます。
「ピーチ」の茹で上がりに合わせて温めた鍋のソースと和えます。
このソースは〈牛肉のトスカーナ風煮込み※〉で作ったソースの残りです。
※牛肉のトスカーナ風煮込みの作り方はこちらをご覧ください。
このスーゴフィントsugo fintoの別名はスーゴスカッパーレsugo scappareとも言います。
スカッパーレは〝逃げ出した〟という意味で肉を取り出したことを意味します。
フィントはフェイク(偽装)、スーゴはスープのことで、ミートソースフェイクとなり、〝ミートソースの様な味のするソース〟となります。
肉が入っていないのに肉の味がするという肉の旨みが詰まったソースで、一つの鍋で作った肉料理を二つの味で楽しむというイタリア家庭料理ならでの文化だと思います。
太い生パスタの「ピーチ」は鍋の中で弱火でゆっくり煮込んで、ご自分の好みのアルデンテの状態にすれば良いと思います。
「塩」で味を整えてから、「ペコリーノトスカーノ※/パルミジャーノや粉チーズでも代用化」「オリーブオイル」を加えます。
※ペコリーノトスカーノPecorino Toscano_トスカーナ地方の山羊の生乳チーズで甘く優しい味わい。
後からチーズをかけても構わないのですが、鍋で乳化させることでより一体感を出しました。
皿に盛り付けて「オリーブオイル」を回しかけて出来上がりです。
モチモチシコシコのパスタをしっかりした味の煮込みソースと合わせた〈ピーチのスーゴフィント〉完成です。
材料〈2人前〉
材料 |
ピーチ 200g |
〈ピーチ〉 |
中力粉 500g/水 230ml |
※1.ペコリーノトスカーナチーズ…トスカーナ地方で作られた羊の生乳のチーズ
作り方
<ピーチを作る>
① フードプロッセッサーに中力粉、水をいれ回す。まとまってきたら台に取り出し体重をかけるように練る。
② まとまってつやが出てきたら真空調理またはラップで包んで2時間以上冷蔵庫で寝かせる。
③ 寝かせた生地に打ち粉(分量外)をしてパスタマシンにかけ、折りたたんで延ばす工程を何回か繰り返す。
④ 5mm厚さになったら台の上に打ち粉をして広げ、7~8mm幅に切る。
⑤ 1本を30cmくらいに細長くのばし、打ち粉の中にいれ粉をまぶし、全て終わったら余分な粉を落とす。
<ピーチのスーゴフィントを作る>
⑥ 鍋にたっぷりの湯を沸かし、1%の塩を入れピーチを茹でる。(約10~13分お好みの硬さになるまで。)
⑦ 鍋に牛肉の煮込みで残ったソースを入れて温め、①のピーチを加え、弱火でゆっくり煮からませる。
⑧ 仕上げに塩で味を整え、火を止めてからチーズ、オリーブ油(EXV)を入れ乳化させる。
⑨ 器に盛りオリーブ油(EXV)をかけて完成。
◆打った後に真空で寝かせておくと浸透圧でつやがでてこしも強くなる。なければラップでもよい。
◆パスタマシンに折りたたんで何回も入れているうちにグルテンがでてくる。
◆パスタマシンがなければ麺棒で少しづつのばして5mm厚さにする
◆パスタを作るときは茹で上がりに合わせて鍋のソースを温めておくと茹でたパスタがすぐに絡まり、パスタものびない。
◆ペコリーノトスカーナチーズがなければパルミジャーノや粉チーズでもよい。
◆スーゴフィント_イタリア語で肉が入ったソースに似せたという意味。今回は牛の煮込みで使ったソースの残りで肉は入っていないがソースに肉の旨煮がぎっしりつまっているのでこのような名前になった。
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