「ル・スプートニク」
髙橋雄二郎
ジューシーな鰆を香り豊かな春の山菜とあわせて
口伝
鰆のロースト ふきのとう焦がしバターソース
「鰆」は身に70%の水分を持つ魚です。
この豊富な水分を逃さないようにジューシーにローストします。
鰆の下処理
「鰆」の皮目と身の部分に強めに「塩」をします。
「塩」をしましたら、網バットの上に置きラップで密閉するように包みます。
網バットに置くことで直接「鰆」に熱が当たることを防ぎます。
台所の30度から40度の温かい場所に30分ほど置いておきます。
ふきのとうを素揚げする
「ふきのとう」は苦味の強い春の山菜ですが、これを素揚げすることで火を入れるとともに苦味を和らげます。
蕾を下にしてガクを開いた状態で160度くらいの温度でゆっくり素揚げします。
素揚げした「ふきのとう」の蕾の部分をツブツブの状態の花の部分を取り出します。
山菜のエチュベを作る
付け合わせの山菜のエチュベetuverを作りますが、エチュベと言いますのはソテーした水分を加えてから蓋をし蒸気で火を入れるという調理法で野菜に火を入れる場合によく使われます。
山菜に火を入れますが、その際、みじん切りにした「にんにく」を「オイル」に漬けたものを用意しておきますと、「にんにく」が「オイル」の中で空気に触れない状態ですので1週間から10日ほど保存でき色々なものに使えて便利です。
鍋にこの「にんにくのみじん切り入りオイル」を入れて中火で温め香りが出てきましたら山菜を入れます。
今回の山菜は「たらの芽」「こごみ」「ウド」「菜の花」といった手に入りやすく特別な下処理のいらないものを選びました。
フライパンに「山菜類」を入れて「塩」をして、少し炒めて焼き色がつきましたら、「水」を加えて蓋をし蒸気で火を入れます。
1分ほどで火が入りますが、途中で一度蓋を開け返します。
固さをみて火が入った山菜から取り出します。
少し食感が残る程度に火を入れます。
鰆を焼く
30分ほど温かい場所に置いていた「鰆」は、全体的に身が白っぽくなっています。
これに焼き色を付けますが、テフロン加工のフライパンで結構なのですが今回はしっかり焼き色を香ばしく付けたいので鉄製のフライパンを使いました。
強火で短時間に焼き色を付けます。
フライパンに「鰆」を入れて焼きますが皮が反ってきましたら上から軽く押さえます。
強く押さえてしまうと「鰆」の水分が抜けてしまいますので、あくまでも軽く押さえてください。
皮目に焼き色が付きましたら、皮目よりも軽めに両側面、身側にサッと焼き色をつけます。
焼き色を付けた「鰆」を200度のオーブンで1分から2分加熱します。
魚というのは40度から50度で火が入りますが、温かい所において置くことによって、魚の中心温度を30度から35度の状態にしておいて、最後に焼き色を付けながら40度にすることで魚はしっとりと水分を逃さずにローストすることができます。
1分経ちましたら「鰆」をオーブンから取り出しておきます。
焦がしバターソースを作る
「バター」を鍋に入れて溶かしますが、急激に強火で火を入れると溶けた部分の水分がどんどん失われてしまいますので、溶け出すまではゆっくりと火を入れます。
「バター」が溶け出して固形の部分がなくなりましたら、中火にして少しずつ温度を上げて焦がしていきます。
「バター」が溶けた気泡は最初大きく粗いものですが、それがだんだん細かくなり色付き始めます。
この際、混ぜてしまいますと気泡の状態がわかり辛くなりますので、鍋はゆするようにします。
この「焦がしバターソース」はスランス料理では基本的なソースの一つです。
ナッツぽい香りの風味が出て、さらに焦げたバターの風味が香ばしくて美味しいソースができます。
「ソース」に色が付きましたら、熱いうちに「レモン汁」とみじん切りにした「エシャロット」と「にんにく」「塩」を加え、「エシャロット」に火が入ったところで、先ほど素揚げして取り出した「ふきのとうの蕾」を入れて、香り付けに細かく刻んだ「木の芽」も加えます。
「ソース」に香りが上がりましたら出来上がりです。
盛り付ける
ローストした「鰆」をカットしますが、焼き色を付けた両端のところは水分が飛んでいますので切り落とします。
二等分した「鰆」を皿に盛り、「塩」の入りにくい中心部分に「塩」をふり、エチュベした「山菜」をのせて、その上に「ふきのとうの焦がしバターソース」をかけます。
さらにドレッシング※で和えた「セリのサラダ」を添えて、彩で「花穂」を散らして香り付けの「ゆず」をかけます。
※ドレッシング_店ではシェリービネガーで作ったものを使いますが、ご家庭では市販のドレッシングで構いません。
ふっくらジューシーにローストした鰆と春の山菜の香りをお楽しみください〈鰆のロースト ふきのとうの焦がしバターソース〉完成です。
材料〈2人前〉
材料 | 鰆(切り身) 150g/塩 少々
花穂 適量/黄ゆず(すったもの) 適量 |
ふきのとう焦しバターソース | ふきのとう 4~5個/バター 80g/レモン汁 大さじ1・1/3/にんにくのみじん切りオイル漬け 5g/エシャロット 20g/木の芽 適量/塩 適量 |
付け合せ | たらの芽 2個/こごみ 2本/菜の花 4本/ウド 適量/塩 少々/にんにくみじん切りオイル漬け 少々/オリーブ油(EXV) 少々/セリ(ざく切り) 適量/お好みのドレッシング 適量 |
※1_ 内ももの下に位置し、もも肉の一部位で丸い形状をしている。さらシにン、シン・カメノコ・トモサンカク ・シンタマカブリの4つに分けられ、今回はやわらかくきめの細かい上 質な赤身肉・シンシンを真ん中の筋に沿って半分にした1切れを使用。調理の際は、筋をきれいに取り除かないと食べた時に口に残る。
※ 2_セイヨウネズというヒノキ科の常緑樹の果実を乾燥させたスパイス。ジンなどの香りづけや、ハムなどのソミュール液(漬け汁)、鹿肉などのジビエ肉の臭み消しに使われる。
作り方
①鰆に塩をし、皮目を下にして網にのせてラップをし、室温30℃~40℃の所に30分ほど置く。
②ふきのとうを160℃くらいの油でゆっくり素揚げする。がくが開くようにつぼみを下にし、揚がったらつぼみの粒を包丁でこそげとる。
③付け合せを作る。鍋ににんにくみじんオイルを入れ香りが出てきたら中火にし、山菜をいれ塩をしさっと炒め、水を入れて蓋をし1分ほど蒸し煮にする。セリはドレッシングで和える。
④フライパンにオリーブ油を熱し、弱火で①の鰆を皮目から焼く。皮がそってくるのでときどき押さえながら焼く。皮目に焼き色がついたらほかの面もさっと焼き200℃のオーブンで1~2分皮目を上にして焼く。
⑤焦しバターソースを作る。鍋にバターを弱火で溶かし、中火にして焦げてきたら火を止めてレモン汁をいれ、にんにくみじん切りオイル漬け、エシャロットを加え塩で味を整え、②のふきのとうのつぼみ、刻んだ木の芽を入れ混ぜる。
⑥鰆を切って器に盛り、塩をふって付け合せを添え、ソースをかけて花穂、ゆずの皮を散らし完成。
◆鰆は温かい所に置いて中の温度まで常温にすることによって焼いたときに均一に火が入る。
◆鰆は70%が水分なので焼きすぎるとぱさぱさになる。フライパンで焼き付けてからオーブンにいれて火入れをすると水分を逃さず、ふっくらジューシーに仕上がる。
◆バターは焦げやすいので、加熱をする際は焦がし過ぎないように仕上げにレモン汁を加えるとよい。
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