「銀座あさみ」
浅見健二
あぶらめ(あいなめ)を骨きりして、ほどけるような食感に。
口伝
あぶらめのお椀
「あぶらめ」とは、関東では〝あいなめ〟と呼ばれるものと同じ魚です。
「あぶらめ」は骨の硬い魚ですので、骨を抜いてから残った骨を〝骨切り〟という作業を行ないます。
旬は、〝鮎〟や〝はも〟の出てくる前の春から6月前くらいまでが一番脂の乗っている時期となります。
本日は500gから600gの「あぶらめ」を使います。
あぶらめの下処理
水洗いをした状態の「あぶらめ」を三枚に下ろします。
まず、お腹を手前にして包丁を入れ、次に中骨を切り、そのまま骨に沿って切り進み、最後に皮一枚を切ります。
三枚に下ろした「あぶらめ」の骨抜きをします。
「あぶらめ」の骨は、頭の方に向かって抜きますが、途中で切れることが多々あり、全部が綺麗に抜けるということはほとんどありません。
そのために骨切りという作業を行ないます。
どこに骨が残っているは、皮面を指で触ることで確認できます。
本日はお椀ですので「あぶらめ」の皮は残したまま使います。
〝骨切り〟は、お腹を手前に皮面を下にして、頭側が右に尾側が左になるように「あぶらめ」のサクを置いてから5mm間隔で包丁を入れ、大体1人前の大きさになりましたら切り離します。
柳刃包丁を使う場合は、包丁を大きく刃の全体を使うことがコツです。
「あぶらめ」の身は柔らかいので、軽く押し気味に切れば一般的な文化包丁でも大丈夫です。
皮一枚を残して包丁を入れることを忘れないでください。
あしらい・吸い口の下処理
お椀の〝あしらい〟には「たらの芽」と「わらび」を使い、〝吸い口〟には「木の芽」を使います。
「たらの芽」は根本を落として、ハカマの部分をぐるりと切って、火が入りやすいように真ん中に十文字に包丁を入れます。
「わらび」は「鍵わらび」という種類のものを使い、お椀の場合は軸を使わず穂先のみを使います。
「わらび」はすり鉢に入れ、同量の「重曹」と「塩」を加えて熱湯をヒタヒタになるくらい注いでから、冷めないように新聞紙などで蓋をして、さらにラップで包みます。
すり鉢が冷めた時点で「わらび」を取り出して、冷水につけて一晩以上晒しますと、シャキッとして苦味が抜けます。
あぶらめの調理
鍋に湯を沸かして海水よりも若干薄めになるように「塩」を加えます。
「あぶらめ」に両面に満遍なく片栗粉をまぶして、余分な粉をはたいてから、沸騰した鍋の湯に入れ、3分ほどしっかり火を入れます。
火が入りましたら水に取り出します。
このままでは「あぶらめ」が水っぽいので、温めた出汁の入った鍋に入れ、余分な塩を洗い流してから取り出します。
出汁は「白出汁」を分量で薄めたもので結構です。
「あぶらめ」は、〝活け締め〟と〝野締め〟の場合では調理の方法が違います。
〝活け締め〟は直前まで生きていた魚をプロが締めたものです。頭と尻尾を落としてから中骨に張り金を入れて神経を抜いたものです。
海から釣られてそのまま死後硬直が始まっているものです。
本日使いました「あぶらめ」は〝活け締め〟でしたので、片栗粉は表面だけに付けましたが、普通魚屋で売っているものは〝野締め〟ですので、竹串などで身と身を広げてその間に刷毛で片栗粉をまぶします。
こうすることで、硬直している〝野締め〟のものも〝活け締め〟のように、加熱した際にパッと身が開きます。
お椀の盛り付け
お椀に熱すぎない湯を入れて温めておきます。
鍋に「一番出汁」を温めて、「塩」と「薄口醤油」で調味します。
お温めたお椀に「あぶらめ」を入れ、「たらの芽」と「鍵わらび」を出汁で温めてからお椀に入れます。
さらに「木の芽」を乗せて、お椀に「出汁」を縁から静かに注ぎ入れて出来上がりです。
春の香りがいっぱいです、ほどけるような食感の〈あぶらめのお椀〉完成です。
材料〈3人前〉
材料 |
あぶらめ(皮つきの3枚おろし) 1枚(160g)/かぎわらびの穂先(アク抜きしたもの) 6本/たらの芽(ゆでたもの) 6本/木の芽 適量/片栗粉 適量/塩 適量/だし汁(1番だし) 適量/薄口しょうゆ 少々 |
作り方
① あぶらめは骨抜きをし、5mm間隔で骨切りしてから3等分に切り分ける。
② 鍋に湯をたっぷりと沸かし、塩大さじ2~3を入れる(海水より薄い程度に)。別の鍋にだし汁適量(あぶらめ全体が浸かる程度)を温めておく。①のあぶらめの表面に片栗粉をまぶし、皮目を下にして塩湯に入れる。3分ほど中まで火を通して一度水にとり、取り出して温めただし汁の入った鍋に入れ、すぐに取り出す(余分な塩を洗い流すための作業)。
③ 人数分のお椀に湯を注いで温めておく。
④ 別の鍋にだし汁適量を沸かし、塩少々と薄口しょうゆで調味する。
⑤ ③のお椀の湯を捨て、②のあいなめを1切れずつ入れる。だし汁で温めたわらび、たらの芽を2本ずつお椀に入れ、木の芽適量をあしらって④の汁を注ぐ。
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