「分とく山」
野﨑洋光
ぶりに小麦粉をまぶして味をからめる
口伝
ぶりの照り焼き
今回は「ブリの照り焼き」ですが、他に〝鯛〟〝金目鯛〟〝さわら〟であったりと、他の魚も同じ方法ですので、季節ごとの様々の魚を焼いてください。
変わりますのは、春でしたら〝木の芽〟夏は〝しそ〟秋は〝ゆず〟冬でしたら〝ゴマ〟を添えて変化をつけます。
必ず、魚は余分な味を付けずに、なるべく自然な味で食べることを心がけてください。
ぶりの下処理
まず、「ぶり」の両面に「塩」をふります。
なぜ「塩」をふるかといいますと、ここで「塩」をしておかないと「ぶり」の味が活きてこないからです。
ちょっと「塩」が入ることで〝ぶり〟が〝ぶり〟らしくなってきます。
他の魚も同様に〝鯛が鯛らしく〟〝さわらがさわららしく〟なります。
魚に塩気が入っていませんと、どんなに美味しいタレを作っても、美味しくもなんともない料理になってしまいます。
「塩」を入れることによって〝旨味〟を感じるという仕組みを作ります。
「ぶり」に「塩」をしましたら10分ほど置いて、水で洗い流してから、布巾などで水気を切ります。
水気を切った「ぶり」に「小麦粉」をふります。
「小麦粉」を振ることによってタレと絡みやすく、味が馴染みやすくなります。
また「小麦粉」は刷毛を使って振りますと、余分な粉がくっつかず綺麗に仕上げることができます。
照り焼きを作る
フライパンに「油」を入れて「ぶり」の表面を焼き付けますが、余裕があるようでしたら「ぶり」の皮目に火を入れておくとパリッとした食感でさらに魚が美味しくなります。
両面を焼き付けましたら、キッチンペーパーでフライパンの油と汚れを拭き取ります。
これは、仕上がりを美しく美味しくするために、とても大切な作業となります。
フライパンが綺麗になりましたら「みりん」「酒」「醤油」を入れて、「しいたけ」と「長ネギの青い部分」を加えて、煮汁が沸騰したら「ぶり」をいったん取り出します.
これは「ブリ」の真に火が通り過ぎるとボソボソして不味くなりますので、途中で取り出して余熱を火を通すためです。
タンパク質の変性は65度から起きますが、魚の芯の温度が100度になってしまってはダメで、75度に仕上げることで、しっとりとして食べて美味しくて、ちゃんと殺菌もできた状態となります。
煮汁を煮詰めて泡が大きくなってきましたら、「長ネギの青い部分」を取り出して、余熱で火を入れた「ぶり」をフライパンに戻し煮ます。
家庭の焼き台で照り焼きを作ると汚れてしまいますが、フライパンで作ると簡単です。
これは焦げ付かないテフロン加工のフライパンの特性をうまく使った方法です。
さらに「ししとう」をここで入れます。
「ししとうは最初から入れてしまうと色が変わってしまいますので、最後に入れて色が少し変わった頃が料理の仕上がりの目安かと思います。
フライパンを揺らしながら、煮汁を「ぶり」にかけまわしてテリが出てきましたら、皿に盛り完成です。
この時、皿に添えるものによって、料理に季節ごとの景色をつけることができます。
例えば〝笹〟を添えることで涼しげな夏の皿になったり、〝南天〟を添えることで冬らしくしたりなります。
この、料理の中で景色を見せるということ、日本の四季を表す〝二十四節気〟さらには〝七十二候〟というものを料理の中に表現するという高い食文化が和食にはあるということです。
ですから皆様も楽しく食卓を飾っていただければと思います。
材料〈2人前〉
材料 | ぶり(切り身) 2切れ/塩 適量/小麦粉 適置/サラダ油 大さじ1/長ねぎの青い部分 12cm/しいたけ 2個/しし唐 4個 |
<A> | みりん 150ml/酒 90ml/しょうゆ 30ml |
作り方
① ぶりは両面に薄く塩をふり、10分置く。水洗いをして水気を拭き取り、ハケで小麦粉を全体に薄くまぶす。
② フライパンにサラダ油を入れ、①のぶりを入れて強火にかけ、香ばしい焼き色がついてきたら裏返して両面を焼く。焼いている途中で出る余分な脂は、ペーパータオルで拭き取る。
③ ②に<A>の調味料と長ねぎの青い部分としいたけを加え、タレが煮立ったら一度ぶりを取り出す。
④ タレを焦がさないように強火のまま煮詰め、タレの泡が大きくなってきたら③のぶりを戻し入れ、長ねぎの青い部分を取り出す。
⑤ タレが煮詰まってさらに泡が大きくなってきたら、しし唐を加える。しし唐の色が鮮やかに変わったら、煮汁を全体に回しかけながらさらに煮詰め、照りが出たら火から下ろす。
⑥ 器にぶりとしいたけ、しし唐を盛りつけ、お好みで、笹や南天など季節の添え物をあしらう。
◆ぶりに小麦粉をまぶすことで味がからみやすくなる。
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