白露_令和3年9月7日から9月22日まで
錆鮎
白露—草木に宿る朝露が白く光る頃
昼間暖かく、夜涼しい初秋には草木に朝露が降りやすくなります。
その朝露が緑の葉にキラキラと白く光る様は、静謐な朝のひと時を清々しいものとします。
秋に川で産み落とされた鮎の卵は、十日ほどで孵り〝稚鮎〟となって海へと流されます。
稚鮎は冬の間を海で過ごし〝若鮎〟となる春に川を上りますが、川上に至るとそこで夏を過ごします。
夏が秋となり雌が卵を抱える頃に今度は川を下り始めます。
この川を下る〝落ち鮎〟の背には錆のような模様が出ますので〝錆鮎〟とも呼ばれます。やがて川下で産卵した鮎はその命を落とします。
鮎の一生は、秋に卵から孵り、冬を経て春になると川上へ、さらに秋を迎えて川下で産卵して命を終えるという春夏秋冬の一年の期間の中で繰り返されます。
鮎のようなサイクルの生態系を持つ魚は、植物の一年草と同じように〝年魚〟と呼ばれます。
初夏の塩焼きの若鮎も良いですが、秋の錆鮎の煮浸しの滋味もまた格別なようです。こうして人は自然の営みの中から命を戴いています。
今回の特集は、中華料理特集「慈華の肉料理」とシェフの知恵「中華三種のドレッシング」です。
『シェフパートナーズ 料理塾』編輯子 秋山 徹