小満_令和元年5月21日から6月5日まで
この時候「小満/しょうまん」は、陽気盛んで、山野の植物は花を散らして実を結び、田に苗を植える準備を始めるなど、万物がほぼ満足する季節と『暦の本』にあります。
また別の書物には「万物が成長し天地に満ちはじめる」ともあります。
若葉のころ
この時候の季語に、山野一面を覆う新緑をあらわす「万緑」がありますが、私の記憶の中にも「万緑」を思い起こす場面がいくつかあります。
二十年ほど前に、この時候の「奈良/山野辺の道」を取材した際、脇道に逸れた場所に柿木畑を見つけました。
その艶やかな緑にカメラマンも私も息を呑み、撮影も忘れしばし佇みました。
それは、あたり一面に漂う生命力と、澄み渡った爽やかさとを同時に感じた瞬間でした。
蕪村の句に「茂山や さては家ある 柿若葉」というのがありますが、あの景色を見てこその味わいがあるというもので、良い句とは時代と空間を超えるものだと感じました。
また、その頃に「柳生街道」で目の当たりにした、楓の若葉〈若楓〉の葉と葉の緑の隙間から一条の陽が差し込む風景も見事でした。
この時は、この陽を求めてカメラマンがカメラを構えたまま1時間動きませんでした。
春の名残りと夏の走り
またこの時候は、春の名残りと夏の走りを味わう季節でもあります。
春の名残りとして「筍、蕨、芹、空豆、甘鯛、白魚」
夏の走りとして「トマト、セロリ、トウモロコシ、枝豆、鯵、鮎魚女」などです。
現在は、流通と生産技術が進んで一年中手に入るものもありますが、季節の変わり目の食卓に、過ぎ行く食材とこれから旬を迎える食材が同時に乗るのは楽しいものです。
『シェフパートナーズ 料理塾』編輯子 秋山 徹