大暑_令和元年7月23日から8月7日まで
大暑とは字のごとく夏真っ盛りという時候です。
昔の日本人は、暑さの厳しいこの時候を乗り切るために、滋養のあるものを摂って体調を崩さぬように備えました。
中でも「土用の丑の日」には薬湯に入ったり、お灸をすえると夏バテや暑気あたりの防止になりとされていました。
現代でも誰もが知るのが「土用の丑の日」の鰻です。
土用の鰻(うなぎ)
土用の丑の日に鰻を食べるようになったのは、江戸中期に鰻屋に宣伝を頼まれた蘭学者の〈平賀源内〉が「今日は丑の日」という看板を鰻屋の前に掲げたのが大当たりして、それ以降「土用の丑の日」といえば鰻を食べるようになったというのが俗説として知られています。
しかし、それ以前から「丑の日」にちなんで〝う〟の付くもので滋養があるもの、〝うなぎ/鰻〟〝梅干し〟〝うり〟などが好んで食べられてきました。これ以外にも中国から入った〈陰陽五行説/おんみょうごぎょうせつ〉からという説もあります。
丑の方角は北北東で隣り合わせる丑寅(東北)とともに、邪気・悪霊の出入りする門〈鬼門〉とされます。この鬼門の方角を守る神は陰陽道では〈玄武〉とされていますが、〈玄武〉は黒を象徴する神でもあるため、人々は邪気を払おうと黒い食物〝鰻〟〝黒鯉〟〝黒ナス〟を食べる習慣があったというものです。
しかし一方、鰻を食べると神罰にあたると伝承されている地域もあります。宮城県本吉郡では鰻を「雲南様」と呼び、食べることが禁じられていますし、鹿児島県大島郡古仁屋勝浦の泉の鰻は「神の使い」とされているため捕獲自体が禁じられています。
滋養豊かな有難い鰻だからこそ、食べることも食べてはならないことも〝特別なもの〟に対する意識の現れなのでしょう。
鰻(うなぎ)
ウナギ科で全長40cmから1m。北海道南部以南の各地に分布する。
『万葉集』に記されるなどくる区から食用にされ、養殖ものは天然のしらす鰻から育てられる。台湾から活けを、中国から加工品を輸入。
【選び方】天然物の生は300g程度のものを、養殖ものは大きすぎると味が落ちるので250gくらいのものを選ぶこと。腹側が黒いと脂が乗っている。「蒲焼き」で求める時は、製造年月日を確認して新しいものを購入する
【旬の時期】養殖ものは初夏に出荷。天然物は夏と秋から冬の「下り鰻」が美味
【産地】養殖ものは鹿児島県、静岡県、愛知県など。天然ものは青森県の小川原湖、千葉県の手賀沼、関東の利根川、四国の仁淀川、九州の筑後川など。
【栄養】脂肪が20%と多く、レチノール(ビタミンA)が豊富、皮にはコラーゲンが含まれる。
以上、野﨑洋光『料理上手になる食材の基本/世界文化社』より