立秋_令和元年8月8日から8月22日まで
この時候「立秋/りっしゅう」から「暦」の上では秋となります。新暦と旧暦の月次の差から違和感を覚えることもありますが、夏の盛りを迎えれば、それからは季節は緩やかに秋に向かっていくばかり、という日本人独特の感性でとらえれば、「秋が立つ」秋の始まりと云えるでしょう。
冷酒と冷奴
俳諧では、「立夏」から「立秋」の前日までの3ヶ月間、初夏・仲夏・晩夏を「三夏」と云います。
またこの90日間を「九夏」とも呼びます。
「冷奴」「冷酒」は、この三夏・九夏の季語です。
「冷奴」も「冷酒」も、冷やした豆腐や酒ではなく、常温のままのもの、という意味だそうです。
「温」めたものではない、という意味の「冷」ということでしょうか。
夏は、なんといっても冷やした酒「冷し酒」ですね。
酒は、季節によって、春はそのまま「冷酒」、夏は冷やして「冷し酒」、秋は温め(人肌)の「温(ぬく)め酒」、冬は熱めの「燗酒」とその姿を変えます。
またそれぞれに、当ても肴も違います。
豆腐と納豆
「豆腐」も「納豆」も、中国から留学僧が日本の寺に持ち帰り、やがて一般に広まったものです。
寺院に伝えられた名残りを、豆腐で「高野豆腐、南禅寺豆腐、空也豆腐」、納豆で「大徳寺納豆、寺納豆、唐納豆」などの呼称に見ることができます。
以前から「豆腐」「納豆」の呼称に疑問を持っていました。〝豆が腐ったもの〟が「なっとう」で、〝豆が形に納められたもの〟が「とうふ」ではないかという疑問です。
「納豆」の呼称の由来に関しては、寺院の出納業務を行なう「納所」という場所で、豆を貯蔵し作られていたという事からというのがわかりましたが、「豆腐」についてはまだ納得のいく説に巡り合っておりません。
今宵も、うんと冷した「冷し酒」に「野﨑料理長のくずし奴」を当てに、「豆腐」の秘密へ思いを巡らせ一献、そしてまた一献。
甘露、甘露で宿酔い。
『シェフパートナーズ 料理塾』編輯子 秋山 徹