大雪_令和4年12月7日から令和4年12月21日まで
あえ(饗)のこと
大雪_降雪地方では本格的に雪が降りだす頃です。そろそろ、雪から木を守るために縄を張る〝雪吊り〟が始まります。
2020年の大雪にもご紹介しましたが、奥能登地方(輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)には、古くから伝わる「あえ(饗)のこと」という農耕儀礼があります。
稲作を主る田の神様を祀るもので、「あえ(饗)=ご馳走」の「こと=祭り」と意味します。
稲の収穫後の十二月五日頃に、農家の主人が紋付袴姿の正装で、田の神様を家に招き入れて、風呂にお入りいただいたり、食事を供して、春になるまで家の中で過ごしてもらいます。
そして、春の耕作前の二月九日に、再び風呂へご案内、食事を供して田んぼへとお送りして豊作を願うというものです。
「あえのこと」は、奥能登地方の稲作農家にとっては重要な儀礼で、1976年に国指定重要無形民俗文化財に指定され、2009年にはユネスコの無形文化遺産に登録されました。
儀式の内容や順番は各農家によって違うようで、ある家では一般的に縁起の良い米を蒸して作る「赤飯」は、「蒸し=虫」と稲に悪いもの(虫)につながるため避け、「小豆ご飯」を供えたり、他家では「田が焼ける」(干ばつ)を思い起こさせるから「焼き魚」を供えないというなど、食事にも家々の特徴があるようです。
また、田の神様は夫婦の神であるので、座布団などはの支度が必ず二人分用意されます。
前候の「小雪」では、東北地方や北陸地方の、晩秋の収穫後十一月十六日に田の神様が山に帰られる時と、耕作前の三月十六日に16個の団子をお供えするという「十六団子の日」を紹介しましたが、同じ北陸地方でも、山へお帰りになるのを見送るのと、かたや家の中に招き入れて春まで過ごしていただくという、この田の神様を祀る方法の違いには、大変な面白さを感じます。
今回の特集は、イタリア料理特集「薮崎友宏 冬の薬膳」とシェフの知恵は「橘始黄 豆乳編」です。
『シェフパートナーズ 料理塾』編輯子 秋山 徹